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第13回 さらなるDX化とCS向上に向けて、PDCAサイクルへクチコミデータを活用 -- ロイヤルホールディングス株式会社 戦略部 主任 杉田 拓朗 氏、アールエヌティーホテルズ株式会社CX・EX向上プロジェクト部長 三宅 一平 氏、関東営業部 部長補佐 兼 リッチモンドホテル成田 総支配人 緑川 拡伸 氏

更新日:5月1日


写真キャプション:左より、緑川氏、三宅氏、杉田氏

今回のTrustYouインタビューは、日本全国にリッチモンドホテルを展開するアールエヌティーホテルズ株式会社様に、社内のDX化やクチコミデータを活用したCS(顧客満足度)向上の取り組みについて、お話をうかがいました。ロイヤルホールディングス株式会社の杉田氏からは経営サイドの視点でのお話を、CX・EX向上プロジェクト部長の三宅氏からは本社目線、そして関東地区統括支配人の緑川氏からは現場目線からの貴重なお話をいただきました。(聞き手:TrustYou株式会社 代表取締役 志和 孝洋)


志和:皆さまのプロフィールを教えていただけますでしょうか。


三宅氏(以下、敬称略):私は2006年12月にアールエヌティーホテルズ株式会社(以下、アールエヌティーホテルズ)に入社をし、社歴は18年になります。 元々、他社のリゾートホテルで勤務をしていまして、接客を通してお客さまとお話をするのが大好きで、ホテリエを一生の仕事にしたいと決めました。その後、様々な形態のホテルで働きましたが、ビジネスホテルも経験してみたいという思いがあり、先に入社をしていた友人から誘われました。


緑川氏(以下、敬称略):私は2007年に仙台の店舗でアルバイトとして入社し、そこから現在に至ります。学生の頃から接客に携わる仕事をしており、接客に関連する仕事につきたいという思いがありました。入社当初は、接客の仕事がしたいという思いのみで、支配人になりホテルを経営したいとは、考えてはいませんでした。


杉田氏(以下、敬称略):私は、3年前にロイヤルホールディングス株式会社と双日株式会社(以下、双日)との間で資本業務提携を結んだ際に、双日から出向をさせていただく運びとなりました。双日入社時の配属は経理部で、その後、M&A関連を中心としたキャリアを歩んできました。ホテルの経験は全くない状態からのスタートでしたが、業界知識を教えていただきながら、私の知見をうまく活かしていければと思い仕事をしています。


志和:三宅様、緑川様は長い間、ホテル業界にいらっしゃいますが、これまでの時代の流れの中で感じられた変化や、印象深かったことがございましたらぜひ教えてください。


三宅:ホテルを取り巻く環境は変わってきたと思います。まず、アールエヌティーホテルズ入社後に一番驚いたのは、当時競合他社に先駆けて導入した自動精算機です。自動精算機により毎日の現金確認作業がなくなり、その分チェックイン業務に余裕が生まれ、接客と接遇に時間をかけられるようになったのは画期的でした。当時、その体験をとても新鮮に感じたのを覚えています。


緑川:私が入社した頃は、まだ予約を電話やFAXで受けることが多く、スタッフが受けた予約情報をホテルのシステムに手動で入力していました。現在では、電話やFAXでの予約がほぼゼロに近くなっており、予約の情報も自動で取り込まれるようになりました。また、クチコミに関しても、入社当時は楽天トラベルかじゃらんnet経由のみでしたが、 販売するOTAが増えていく中でクチコミ分析も多岐に渡るようになりました。お客さまも入社当時は、日本人のビジネス利用のお客さまメインでしたが、現在は海外の方やレジャー利用の方も増えています。予約システムだけでなく、客層に関しても過去15年間で大きく変化したと感じています。



--社内の業績指標とクチコミデータを組み合わせ、経営判断に活用


志和:現在、3人一緒に取り組んでいることは、どのようなことですか。


三宅:弊社では、お客さまの満足度を高めていくことを目的とし、スタッフ主催のおもてなしプロジェクトを設け、あえてお客さまに近い現場スタッフによるディスカッションを通じて、本社に対して改善を提案してもらうようにしています。その内容は「昨日お客さまにこんなこと言われました こんなこと書かれました」といったスタッフの実体験を基にしたものです。一方で定量的なデータを元に分析するにはツールやリソースが不足しており、局所的になりやすいという課題がありました。杉田の入社をきっかけに全社的なDX化という形で課題解決に取り組んでいますが、現在は、Data Driven(データドリブン)のD(ディー)のあたりまでは進んできているという印象です。


杉田:データの部分で言うと、ホスピタリティ業界は多くのデータが社内で蓄積されていると思います。元々、ご宿泊いただくお客さまのお名前や電話番号といった情報を業務上扱う必要がある業態ですし、オンライン上の予約データも蓄積されています。全社的なDX化を進めることにより、データで顧客行動を把握し、分析をしていく余地は十分あるのではないかと感じました。しかし、販売するOTAだけでも両手で数えるには足りないほどの数があり、クチコミデータ、予約データ、業績データといった多くのデータがアクセス可能であるものの、あちこちに散らばっており活用できていないという部分に対して個人的に強い課題感がありました。


 まず、私の方ではTrustYouのクチコミデータと会社の業績データを組み合わせて経営判断の参考データとすることがポイントだと感じ、ビジネス・インテリジェンス・ツールのプラットフォームでのデータ一元管理や見える化、活用を進めてきました。現在も社内で議論を重ねていますが、売上を上げていくためには、ホテルの価値を高めなくてはなりません。ホテルの価値については、クチコミスコアで測れるのではないかと思い、社内でもクチコミを重視しています。

志和:弊社TrustYouの強みであるクチコミデータの網羅性に魅力を感じていただいたんですね。


杉田:実はTrustYou導入前、クチコミは店舗ごとに楽天トラベルとじゃらんnetに投稿されているクチコミのみを見ていました。当時の顧客層は国内のビジネス利用のお客さまがほとんどでしたので、2社のクチコミを確認することで、全てのクチコミの7、8割はカバーできていたのではないかと思います。お客さまの予約経路やクチコミを投稿いただけるチャネルが多様化している中、TrustYouは偏りなく全てのOTAのクチコミスコアが見ることができるため、網羅的なデータでの検証および各店舗の比較もしやすいです。インバウンドのお客さまが主体の店舗であっても、国内のお客さまが主体の店舗であっても、網羅性があるためTrustYouだけを見れば同じ条件で比較をすることができます。


 また、TrustYouのクチコミ指標であるセンチメントスコアとインパクトスコアが非常にありがたいです。本部の統括担当や支配人のレベルになると43店舗分を一つひとつ見るのは無理なので、そこはやはりクチコミがカテゴリー分けされていて、弊社ホテルのどの部分にお客さまの不満が溜まっているのか、どこの評価が高いのかというのが一目でわかるのが非常に良いなと思います。


 それから、社内で実施した打ち手に対してのお客さまからの感想が視覚化されたデータで見ることができる点も良いと思います。昨年、Wi-Fiシステムの入れ替えを全店舗で実施しましたが、実際にその後でクチコミスコアに変化が見られました。もともと従業員からの不満もWi-Fiに関するものが多く、実際にお客さまからご指摘いただいたこともありました。また、Wi-Fiに関するクチコミはお客さまからも書かれやすい傾向にはあります。TrustYouで競合とのスコア比較もし、お客さまのライフスタイルや働き方が変わってきている中で、Wi-Fiシステムの入れ替えに関する意思決定をした次第です。


ホテルのレビュースコア推移
TrustYou総合スコア(全施設の平均)の推移

 また、経営陣へ設備投資に対する効果を報告する際も、TrustYouの画面上の数字で示せるようになり、会議の準備作業が楽になりました。改装後の効果検証も、「クチコミスコア」と「業績」といった2つの側面で説明できるので、実際にクチコミのスコアが上がっていれば改装といった施策は間違いではなかったという確認ができ、あとは売り方をどうするかにフォーカスができます。どこに投資するかというのもそうですけど、PDCAの注力をどこにして回していくかという意味で、クチコミが今活用できるというのは非常に良いと思います。



--月次レポートと週次レポートで、PDCAサイクルの構築を目指す


志和:どのような流れで弊社TrustYouの製品を活用したPDCAサイクルを御社内で回しているのでしょうか。


杉田: 店舗ごとの月次報告レポートにクチコミの点数を入れて、支配人から報告していただいています。店舗ごとの業績とブッキングカーブがどのような推移か、クチコミのスコアとしてどうだったか、競合と比べてどうだったかを分析しており、これをサイクルとして回しています。


緑川:またクチコミスコアは各店舗週次で追っています。良かったところ、悪かったところ、目指すところに対しての進捗状況も見えるので、記録としても残ります。また、それを部下に共有、発信しています。このサイクルを今後もうまく活用していければと思っています。


杉田:週次報告は、現在の進捗に対してどんな打ち手を打っていくべきかを考えるためのもので、どちらかというと未来フォーカスです。一方で、月次報告の方は過去フォーカスで1ヶ月振り返ってみてどうなったかという、PDCAのC(Check)のシーンのところに重点を置いています。


 また、店舗と本社で同じデータを共有できるようにすることが大切だと思います。クチコミの分析においても各店舗でレポートするデータがバラバラだと横比較ができません。私自身のデータ分析・活用のイロハにもなっていますが、各店舗で同じもの(指標)をレポートとして共有し見られるようにすることがポイントだと思います。そして、データに基づいたレポートを各店舗からしていますが、それをルール化し、本社と現場で実際に見ていくとなかなか面白く、最近では良いサイクルになり始めたと思っています。


アールエヌティーホテルズ株式会社様インタビュー
アールエヌティーホテルズ様の本社オフィスにて

志和:TrustYouのアラートメールやレポート機能はご活用いただいていますか。また、弊社のサービスを活用いただく中で、クチコミからの気づきなどありましたか。


杉田:私の方では、毎月経営指標を可視化するためのBIツールにTrustYouのクチコミデータを入れるため、レポートのダウンロードは毎月行っています。


緑川:店舗ではアラートメール機能を使っています。お客さまからクチコミが入るとアラートメールが送られてきます。良いクチコミをはじめ対応に緊急性を要するクチコミも確認できますし、細かく確認ができるので活用させていただいています。


 TrustYou導入前の話ですが、クチコミの活用事例として私が担当していた浅草の店舗についてお話しさせていただきたいと思います。お客さまの8割以上が海外の方となる同店舗では海外のお客さまより、「枕の追加リクエストをしましたが、持ってきてくれなかったのが残念だった」といったご意見クチコミが多かったです。海外のお客さまは枕を2個使い、枕を高くして使用する傾向があり、こ、日本人と使用する傾向が異なります。この様にクチコミから客層によって必要としている備品が異なり、客層に合わせた対応が必要であることがわかりました。

 

 ホテルが特定の客層をターゲットにしている場合、クチコミからの気づきも得られると思いますし、TrustYouのセンチメント機能を使えばその情報をすぐに吸い出すことができるため、ニーズを先回りして手を充てられるというメリットを感じております。



--作業的な部分をどれだけ機械化、効率化できるか


志和:DXを含め、今後目指すような目標ややりたい事などはございますか。


三宅:弊社では「人と食の価値で社会の差別化をしていく」 とういうグループ方針があります。超高齢社会の中で、人手不足が社会的課題となっている中では、クチコミへの返信作業もそうですが、作業的な部分をどれだけ機械化、効率化できるかということがDXの中で目指すべきことだと思います。


 また、特にロボティックスにおいては、そもそもホテルの設備がロボット用に作られていません。バリアフリーを基本にして作っていたはずの建物にも、段差があったりします。また、ロボットを導入しても、そこからお客さまからのフィードバック(感想やご指摘)にどう向き合うかが我々の求められるところなのです。自動精算機の導入時もそうでしたが、スタッフとお客さまの双方にとって良いはずのものに対しても、お客さまから何かしらのご指摘(例:接客が冷たく感じるなど)をいただくこともあります。一方で弊社ではお客さまのためになるという取り組みに対して社内から反対意見が出ることはあまりありません。


 我々が考えるDXですが、主役は実際にテクノロジーを使う社員一人ひとりです。「DXはスタッフが最小限の労力で最大限のおもてなしを実現するために手助けをするもので、人間に取って代わるものではない」と、弊社社長からも社員にも伝えています。


志和TrustYouは御社の活力のある職場作りのお役には立っていますでしょうか。


緑川:成田の店舗で月1回清掃の定例会議をやっています。進行は基本的には担当スタッフにお任せして、私も参加していますが、資料にはTrustYouの清掃に関するセンチメントスコアやクチコミのスクリーンショット画像が貼り付けられています。会議では、その資料から何か違和感を感じる点や改善すべき点について話し合いをしています。ある特定の問題についてのクチコミが蓄積された後に改善を始めるではなく、先回りして気づけるようにしたいです。実際に部屋にも行って自分の目で見て、能動的にスタッフが判断して先回りをして改善できたらもっといいですよね。


杉田:ホテルの売上や利益は、ホテルがどれだけ頑張るか、だけでなく、外部環境からの影響を大きく受ける事業です。例えば、コンサートなどのイベント需要もそうですし、コロナ禍の際は、どれだけ頑張っても、通常と同じ売上を達成することはできませんでした。我々では宿泊需要そのものをコントロールすることは難しいため、各ホテルがマーケットの中でどの程度やれているのかという判断が重要です。TrustYouでは競合Index(競合施設とのクチコミスコア比較)も参照できるため、自社がどうだったのか、外部環境がどう変わったのか、競合と比べてどうだったのか、といった比較でホテルの頑張り自体を見えるようにすることにも役立っています。


三宅:弊社でもコロナ禍の中で非常に大きなダメージを負っていた店舗がありました。数字も悪くなる中で心を折ることなく進んでいくことは大変ですよね。そのような状況下でしたが、クチコミ評価を通して、今取り組んでいることがきちんとお客さまに評価されているのが確認できました。それを支えに取り組んだ結果、数字が大きく去年1年間で改善したという例もあります。やはり会社に帰属し、誇りを持って働くためには、そのような指標ややりがいが必要です。


志和:最後にホスピタティ、旅行業界の皆さんにメッセージがあればお願いします。


三宅:今はインバウンド需要が回復しており、業界も良い感じになっています。ただし、今後、お客さまの奪い合いとなる可能性もあり、クチコミもさらに重要になってくると思います。弊社は価格の上げ下げだけで生き残っていこうとは思っていません。やはり良いものを提供し、お客さまから選ばれるホテルになり、その結果、利益をいただけるようにしなければなりません。


緑川:やはり、宿泊施設としてどうしても苦しくなると安くするという傾向はあります。その部分は業界として考えていかないとならないと思います。地域全体で協力し、ある程度方針を固めて共に業界を盛り上げていくことが必要です。自施設さえ良ければ良いというホテルが増えると、共倒れしてしまいます。そのためにはホテル会のような場で、足並みを揃えていかないとと強く感じています。


杉田:少し大きな話になりますが、 観光が日本の主要産業になっていく上で、 それを支えるのは宿泊事業者だと思っています。日本の観光全体を盛り上げる当事者という意識をホテル事業者が持ち、例えば「日本国内のホテルのクチコミスコア平均は、アメリカのホテルのクチコミスコア平均よりも、何ポイント高いのですよ」と言えるような「さすがおもてなし大国」と海外から言われるところまで持って行けると良いなと思っています。


志和: 観光立国日本を世界にもアピールできるチャンスですよね!杉田様、三宅様、緑川様、本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。


インタビューご同席者様:

ロイヤルホールディングス株式会社

戦略部 主任

杉田 拓朗 氏


アールエヌティーホテルズ株式会社

社長室 CX・EX向上プロジェクト 部長

三宅 一平 氏


アールエヌティーホテルズ株式会社

関東営業部 部長補佐 兼 リッチモンドホテル成田 総支配人

緑川 拡伸 氏


写真キャプション:左より「リッチモンドホテル成田(外観)」、「リッチモンドホテル プレミア東京スコーレの"ザ・ロイヤルブックルーム"」、「リッチモンドホテル プレミア京都のロビー」

リッチモンドホテルズURL: https://richmondhotel.jp/


 

編集後記:


今回の取材はアールエヌティーホテルズ株式会社様の本社オフィスで行われました。お話を伺っているうちに、3人の皆さんのこれまでの経験や強みが向かうべき方向性に統一され、お互いに信頼しあっているという連携の強さを感じました。組織として顧客満足度の方向性を定め、TrustYouのクチコミ管理ツールを活用しPDCAサイクルを本部と現場で連携して回して好循環が生まれている、というお話を伺うことができ大変嬉しく思いました。

また、DX化の主役は社員ひとりひとり、と考えていらっしゃる社風や自社だけが売上を伸ばすだけではなく、ホテル全体が提供価値を最大化させていく環境づくりが必要だということ、そして観光立国日本への貢献という「その先にあるもの」をしっかりと見据えていらっしゃる皆さんのご意見は個人的にも非常に刺激になりました。(TrustYou代表取締役 志和孝洋)

 


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