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第10回 海外店舗展開と睡眠解析事業を加速させるために -- 株式会社ナインアワーズ 海外店舗開発部 ディレクター 米本 秀高 氏

更新日:9月15日


カプセルホテル「ナインアワーズ」を全国 13 店舗、その他ホテル 7 店舗を運営する、株式会社ナインアワーズ。同社は、コロナ以前より海外展開の計画を進めており、コロナ禍でプロジェクトを一旦休止しましたが、再始動しています。また、昨年には、新たに「睡眠解析事業」を始動、都心のビジネスホテル・カプセルホテルの需要が大きく変化する中で、“新しい価値”の提供を始めています。今回TY Top Interviewは、海外店舗開発部ディレクターの米本 秀高 氏をお迎えし、進化を続ける同社についてお話をうかがいました。(聞き手: 前TrustYou代表取締役 設楽 奈央)


設楽:米本様の自己紹介を含め、お仕事内容を教えていただけますでしょうか。


米本氏(以下、敬称略):ナインアワーズ自体は創業10年以上を経ていますが、私は3年ほど前に現在の任務に着任しました。コロナ以前より、弊社では海外に店舗を出店する計画があり、海外店舗開発部としては「これからやるぞ」と意気込んでいた矢先にコロナ禍となってしまいました。実は、欧州での出店がほぼ決まっており、現地のパートナーとも話を進めていたのですが、延期となってしまったのです。


 会社としては、海外店舗開発の業務は一旦休止し、国内店舗の売上を守ることに集中する方針を取りましたので、私の方では、国内店舗のマーケティング全般の業務を担当していました。もちろんクチコミも見ますし、店舗運営の効率化など、様々な業務をやっておりました。過去2年間については、「この仕事をやっていました」と上手くお伝えできないほどです。


設楽:なんでも屋”のような立ち位置で、やるべきことはできる限り素早く全て拾うという感じだったのでしょうね。


米本:そうですね。とにかくアクションし続けている感じでした。役割を決めて着実に動かそうとすると、なかなか時間がかかってしまい、事が前に進みませんので。


設楽:海外店舗開発部ですが、コロナの収束に向けて、また動き出していかれるイメージなのでしょうか。また、なぜ欧州だったのですか。


米本:はい、まさにその通りでして、2023年は海外で1店舗立ち上げたいと思っています。また、なぜ欧州かというと、後にパートナーとなるヨーロッパの実業家の方が来日された際にナインアワーズに宿泊し、とても気に入っていただき、お声がけをいただいたのがきっかけです。そして、その方についてさらに知ると、とても優秀な実業家であり、とても信頼できる方であることがわかりました。


 また、欧州の主要観光都市のホテルは宿泊料金がとても高く、安いホテルでも日本円で1泊2万円はしますので、ナインアワーズの部屋を1泊7、8千円で売るというのはビジネス的に成り立つのではないかと思いました。欧州の主要観光都市は元々物価が高いので、逆にナインアワーズと相性が良いのではないかと考えています。


設楽:その土地に合わせて、値上げはされないということでしょうか。


米本:もちろん、近隣のホテルが1泊5万円で客室を販売しているのであれば、弊社は3万円で売るかもしれません。物価にもよりますが、近隣ホテルの1泊の宿泊料金の相場が約2万円であれば弊社としては売りやすいですし、逆に東南アジアなどでホテルの宿泊料金が1泊1万円以下となると逆に売りにくくなります。ですので、もしかすると弊社としては、東京よりも物価の高い欧州の都市の方がやりやすいのかもしれないですね。現在、海外展開につきましては、欧州の主要都市を視野に動いています。


設楽:日本のカプセルホテルは、海外の方にも非常に興味を持っていただけていますし、メイドインジャパンの素晴らしさがありますので、すごくフィットしそうな感じがしますね。


米本:少しずつですが、海外でもカプセルホテルが出てきているのですが、実際はまだ少ないです。弊社としては、100部屋くらいの規模のホテルの出店を考えており、それは事業的にも成り立つと思っています。今年と来年がチャレンジの年となりますね。ついにそのフェーズが訪れることになります。3年間ずっと国内のみに集中していましたので、やっと再開できます。



コロナ禍でのマルチタスク化と社内コミュニケーション、清掃の見直し


設楽:この3年間でかなりのマーケットの変化があった中で、国内施設のマーケティングや業務全般にフォーカスされていたとおっしゃっていましたが、具体的にはどのあたりに注力されていたのですか。


米本:運営施設におけるコロナ対策については、「どこまでやったら良いのか」という思いを常に抱えていました。対策としては、様々なことがありますが、果たしてここまでやることに意味があるのか、お客さまへの見せ方(ブランド)との兼ね合いもあります。限られた予算の中バランスを取るのが非常に難しい中で、節約をしながら運営を続けてきました。


 まず、新型コロナウィルスの発生直後には、店舗の休業判断がありました。そして、弊社の方針としては「正社員を守る」という決断をし、アルバイトの方のシフト時間を減らさせていただきました。そして、社員とはコミュニケーションの頻度を増やし、あとは清掃手順を全て見直すということに取り組んでいました。


設楽:弊社もコロナ禍におけるクチコミを調べたところ、「コロナ対策」、「ソーシャルディスタンス」といったキーワードにフォーカスしないとクチコミスコアが下がってしまう傾向があり、さらには「清潔さ」というキーワードに今まで以上に注目が集まりました。お客様がちょっとしたホテルの汚れや埃などを、今まで以上に気にするようになってきたので、清掃の見直しはアピールポイントで、正しいアクションだと思います。


米本:その他の取り組みとしては、足元の強化として、もう一度、自社のホームページやOTAのページの見直しをするなど、常に忙しかったように思います。宿泊のお客様が少なくなりましたが、やることは沢山あるという状況でした。


設楽:確かに、こんな時期だからこそ、「今のうちにやっておこう!」という見直し業務は非常に多かったように思います。そして、ビジネス出張のお客様も減少してしまいましたので、打ち出し方も変わりましたよね。


米本:そうですね、一番大きな変化は正社員のみで業務を回すということでした。人件費を最小化し、マルチタスクを徹底して、フロントのスタッフには、「10時のチェックアウト業務が終わったら、ベットメイキングに行ってください」、とお願いしていました。以前はフロントと清掃業務は分けていたのですが、業務の再定義をしました。採用は難しくなるものの、今はフロントと清掃は兼務、が当たり前になりました。


 そして、現場の社員の士気が落ちないように、丁寧に社員の声を拾い上げ、コミュニケーションを取るということをやっていました。コロナ前は、稼働率90%以上という状況がずっと続いていて、目の前にあることに必死でしたので社員とのコミュニケーションはおざなりになっていたかもしれません。コロナ禍が見直す時期を与えてくれたのだ、と前向きに捉えています。


設楽:社員の方が他の業務についての理解が深まると、色々な気づきも出てきますよね。そうすると、今後お客さまが増えた際の対応も変わってくるのでないかと思うのですが、いかがでしょうか。


米本:社員とはビジネス系チャットツール、workplaceを導入して、日々コミュニケーションを取っていました。メールですと、社内の誰宛に送るか迷ったりすることもありますが、チャットツールですと分かりやすいですね。このようにマルチタスク化と社員とのコミュニケーションを増やすことに取り組みました。


設楽:普段は社員を育成するための研修やトレーニングなどはやれているのですか。


米本:今までほとんどやっていませんでしたので、そこも見直す機会にもなりました。これまではOJTでやっていましたので、いわゆる「育成一週間プログラム」といった研修プログラムの策定など、今まで後回しにしていたことをきちんと始め、売上げに甘えていてはだめなのだな、と改めて気づかされました。


設楽他のホテルの方々からも同じことをよく伺います。2019年までは常に満室という状態が続き、目の前の稼働に追われていたものの、そこから突然お客さまがいなくなり、ホテルの運営やサービス自体を見つめ直すことで色々なことに気づかされたと。



睡眠解析プロジェクトの取り組みとは


設楽:コロナ禍を経て、何か新しいことに取り組まれていることがあればぜひ教えてください。


米本:会社全体としては、ホテル業から若干脱却をし、新たな睡眠解析事業を進めており、コロナ禍でその取り組みが加速しています。ホテル事業では売上を上げるために店舗を増やすことが重要ですが、「睡眠データ」を会社のもう一つの軸にし、現在はその部分を育成しているところです。


 弊社のカプセルは、360度身体を囲まれた筒状のベッドで、全店舗で同じ形状のものを導入しています。睡眠データを取る際は同じ環境であることが大切です。人が寝る環境は、ワンルームなのか、周りに家族がいるのか、騒音がある場所なのか、ベッドのマットレスがどこのメーカーなのかなど、それぞれ異なり、色々な変数があります。弊社のカプセルは仕様が全部同じで、環境も一定ですので、研究者や病院関係者に興味を持っていただきました。調査用のカプセルには、センサー、集音マイク、赤外線カメラなどを設置していますが、そのようにしてデータを取り、この睡眠パターンの方はこのような病気が多いなど、健康リスクのある人の傾向などが分かるデータが取れるのではないかと思っております。


設楽:最近、睡眠にこだわる方も増えていますね。私個人としても、健康の基盤として、睡眠が大事だと感じる機会が増えました。リモートワーク主体の企業が増える中で、仕事する場所、食事する場所、家族と過ごす場所、寝る場所が一緒になり、そこで睡眠の質が悪くなると、集中力が下がる一方ですから。 


米本:弊社の場合は、センサーを増やして、精密なデータを取得しようとしており、健康診断となるようなデータを研究者の方々と連携することで、どのような睡眠パターンが良くて、どのようなパターンにリスクがあるのか、などのデータを解析しようとしています。


 まずは赤坂の店舗を「ナインアワーズ赤坂・スリープラボ」として再開業し、試験運用をはじめているのですが、全国に展開したいと思っています。本プロジェクトについては弊社の方で先行投資をしているところです。


設楽:とても興味深いチャレンジですよね。御社のようなカプセルホテルだからこそできることですよね。


米本:そうなのです。カプセルホテルでないとできないプロジェクトですので、ここに関しては将来性を見込んでいます。これはコロナあるなしに関わらず進めていたのですが、コロナで加速しました。ホテル業は波がありますので、最終的にはヘルスケアの会社を目指しています。ヘルスケアがあり、ホテル業がそこを支えているような感じが理想です。


 数年後は、「あそこ、ホテルもやっているよね」と、カプセルホテルの会社と呼ばれないようになりたいです。まだ分からないですが、BtoC向けにはホテル業ですがBtoB向けのビジネスとしてはホテル業でない、という事業形態もありだと思っています。


設楽:確かにコロナを経て、一事業に依存することのリスクが高いということを、色々なところで聞くようになりまったので、主要ビジネスを軸にした複合的なビジネス視点は、より大事になってくると思います。


米本:このようなデータビジネスを今後、日本だけでなく、海外にも展開していきたいと思っています。弊社にとって店舗数を増やしていくことは重要ですが、もう一つの軸があるのは会社として良いことだと思っています。うまくいくかはさておきですが。チャレンジすることが重要だと思っています。もう少しホテル事業で売上を伸ばせれば、睡眠解析事業に投下できる予算も増えますので、そうなると良いなと思っています。



ユニクロのように自社サイトにポジティブとネガティブ両方のクチコミを有効活用


設楽:つまりは、まず目の前にあるホテル事業に注力しながら、並行して新しいビジネスへのチャレンジをしていかれるということですね。ちなみにその場合、TrustYouはどのようにご活用いただくことができそうでしょうか。


米本:TrustYouで一番使っているのでは、アラートメール機能でしょうか。ネガティブなクチコミが入ってくると、それをじっくりと読みます。きちんと読み込んで、ご意見をいただいた方のコメントが本当なのか、真意を確かめます。書き方を見て、全うなことが書かれている場合は、それを元に改善をするように進めます。


 アラートメールは、各店舗のマネージャー全員に届くようになっていますので、自分以外の店舗のクチコミも見ることになります。自分個人の反省点としては、ネガティブなクチコミの下に表示されているポジティブなクチコミを読んでいないことです。


設楽:おっしゃる通り、自然とネガティブなクチコミの方に注目してしまいますよね。ただ、その反面で、ポジティブなクチコミはすごく良いことが書かれていますので、スタッフのモチベーションになりますね。


米本:ホームページにTrustYouさんのクチコミを掲載しています。海外のサイトでは、Googleのクチコミを掲載するところが多いです。今はユニクロさんも自社サイトで、ポジティブとネガティブなクチコミの両方を表示されていますよね。弊社もそれがやりたく、TrustYouさんの機能でできるということを知り、導入させていただいています。


設楽:確かに可視化の時代であり、良いコメントだけを掲載するという時代では、もはやないですからね。お客様もクチコミに対して、より理解を深めており、読み方もよりスマートになっています。ネガティブなクチコミや評判も理解した上でそのホテルを選んでもらわないと、期待値とのギャップが大きく生まれてしまいます。レビュースコアはお客様の期待値のギャップがから生まれるものなので。


米本:そうですね。そこでクチコミを見せないとOTAの方に流れてしまうので、自社サイトのみで予約を完結してほしいという気持ちがあり、導入を決断しました。本社だけでなく、店舗側でも有効的に使わせていただいており、クチコミの返信もTrustYou経由で行っています。

 海外に出店する計画を立てる際に、その地域の類似ホテルのクチコミのパフォーマンスを見ています。カプセルホテルに近い業態のホテルを見て、そこの何が好評で何が良くないのか、など確認しました。また、弊社でも無人チェックインを始めたので、果たしてそれが海外でも通用するのかも調べました。海外の無人チェックインのクチコミを見ていると、やはり日本との違いを目の当たりにし、そのままの導入はハードルが高いなどの知見を得ることもできました。今後を見据えて、海外での完全なチェックイン無人化は可能なのかを調査するためのベンチマークとしても、引き続き活用していきたいです。


 また、弊社はお客様の共用スペースが多く、そこでの騒音の問題がありましたので、耳栓を積極的に配布し、騒音のスコアをTrustYouから出し、変化の推移を確認していました。弊社の場合は、各店舗のスコア(数値)を横並びにして確認していますので、元々イメージしていた仮説に対する答え合わせとして活用しています。


設楽:客観的な指標としての比較は大事ですね。確かに、チェーンホテル様の場合は、そのように同じ指標を横並びで見られるケースが多いです。ブランドのファンを作るためにも、屋号が同じホテル様の場合は特に、横並びで見ていただくのはとても大事だと思います。


米本:横並び比較はしますね。店舗開発を積極的に行っていた際は、ラウンジ、椅子の数、ロッカーに関するクチコミですとか、色々なカテゴリーを見ていました。建築士の方と打ち合わせをする際も、レビューを見てハード面のフィードバックをしたりしていました。ソフト面については、なるべく差が出ないよう、均質化するようにしていますし、接客サービスをあえて最小限にしている宿泊施設ですので、課題としては抽出しないようにしています。


設楽:コロナ禍の2年間、従業員のみなさんで清掃に注力されていたと伺いましたが、その努力が結果としてスコアに現れたら、従業員のみなさんもすごく嬉しいですよね。ESの向上という観点でも、きっと従業員のみなさんのモチベーション向上に繋がるはずですので、過去のスコアやクチコミと比較して、シェアしてあげてください。


米本:それ良いですね。ぜひ、取り入れます。あとは、自社サイトで予約をいただき、宿泊していただいた方に、滞在後のサンキューメールとアンケートをお送りしています。自社サイト経由予約をしていただくお客様からの評価スコアは非常に良いので、さらにスコアを上げたいなと思っていましたので。


設楽:他に今後、御社で取り組もうとしていらっしゃることはありますか。


米本:大きな取り組みではなく、今までやり切れていなかったことを少しずつ着実に取り組んでいくことが大事だと思っています。一つずつ、丁寧にきちんとやりましょうと社内では啓蒙しています。本当に細かいことで、まだできていないことを丁寧に積み重ねてやって行こうと思っています。稼働率が90%まで戻れば良いのはもちろんのことですが、着実かつ丁寧な取り組みという意味でも、睡眠解析のプロジェクトをどう推進していくか、ここにもしっかりフォーカスしていきたいと思っています。


設楽:その点においては、睡眠解析を体験してくださったお客様向けのアンケートを作成しても良いかもしれないですね。それをクチコミとして外にプッシュし、お客様のクチコミを通してプロジェクトを他の方に知っていただくということも、認知度向上の戦略のひとつになるかもしれないですね。


米本:認知度はぜひ上げていきたいと思っています。そして、宿泊目的ではなく睡眠解析目的で泊まっていただくという、新しい層の集客も目指していきたいです。そのためにも、お客様向けに面白いデータをどのように見せるか、も今後の腕の見せ所です。研究者が求めるデータと、消費者が求めるデータは違うこともありますので、見せ方の部分はきちんと意識し、アンケート調査なども検討していこうと思います。


設楽:TrustYouのアンケートとGoogleプッシュ機能は使いがいあると思いますので、ぜひ今後もご活用いただけると嬉しいです。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

左より:「ナインアワーズ赤坂・スリープラボ」外観、カプセルユニット、「ナインアワーズ大手町」内観

ナインアワーズ 公式HP: https://ninehours.co.jp/


米本 秀高(ヨネモト ヒデタカ) 氏 プロフィール

2009年慶應義塾大学法学部卒業。大学卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。その後、2012年にナインアワーズに出資をするコンサルティング会社、株式会社リヴァンプに入社。2019年より現職。

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