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第11回 データに基づく“CS向上”と“おもてなし”の推進の仕組み作りに試行錯誤で取り組む -- 株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント 運営支援本部運営企画部 副部長 清水 絵里 氏

更新日:2023年5月19日


「オークラ ホテルズ & リゾーツ」、「ニッコー・ホテルズ・インターナショナル」、「ホテルJALシティ」の3つのホテルチェーンを運営する株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント。日本発のホテルグループとして積極的に海外へ展開し、長年培ってきた「おもてなし」を強みとするホテル運営会社です。今回のTrustYouインタビューは、2007年に株式会社JALホテルズに入社、2015年の株式会社ホテルオークラとの統合を経て、運営支援本部で各ホテルのCS(顧客満足度)向上に尽力をされてこられた清水 絵里(しみず えり)氏に、TrustYouおよび同社が使用しているツールの活用方法や社内研修など、CSの取り組みについてお話をうかがいました。(聞き手:TrustYou株式会社 代表取締役 志和 孝洋)


志和:まず清水さんのプロフィールについてお聞かせいただけますでしょうか。


清水氏(以下、敬称略):2007年に株式会社JALホテルズ(以下、JALホテルズ)に入社し、現在に至りますが、前職はマーケティング会社にて、ホテルやアパレルメーカー、化粧品など様々なクライアントのコンサルティングを担当していました。JALホテルズは、当時私が担当していたクライアントの中の1社だったのですが、様々な業界の中でもホテル業に非常に興味があったのでご縁あって入社するこことなりました。



--品質目標設定と目標を達成するための仕組化の構築 〜CSアンケート、TrustYou、CSジャーナルの活用〜


志和:2015年以前から、TrustYouをご活用いただいておりますが、データや指標を使ってCSに取り組むということは、以前から取り組まれていらっしゃったのですか。


清水:弊社には、One Harmony という会員組織があり、会員の皆様に「CSアンケート」をお送りし、アンケートで回収した回答をCSの指標にしています。以前は各ホテルが紙のアンケートを館内で配布し、独自に回収をしていました。その仕組みですと、本部の方では、どのホテルがゲストにご満足いただいていて、どのホテルがご満足いただけてないかが把握できません。各宿泊施設にご理解いただき、チェーン全体でアンケートを統一し、オンライン化することで、CSアンケートを作りました。


 CSアンケートはグループ内ホテルのゲスト向けアンケートですので、その回答を指標としてホテルを横比較することができます。しかしながらCSアンケートの結果だけでは各ホテルのエリア内での競合比較はできませんでした。そこで、TrustYouの「パフォーマンススコア」と「競合インデックス」で競合比較をするという目的で導入し、活用しています。


志和弊社のサービスを活用した仕組みができてらっしゃっていて、TrustYouユーザー様の見本といえます。同じ業務を誰がやっても同じ結果をすぐに生み出せるような仕組みができているのが理想ですよね。そのノウハウは前職で培われたのですか。


清水:前職の経験を活かしながらも、本当に試行錯誤でやってきました。色々な方に教えていただいたり、セミナーで勉強したりしながら作って行ったという感じです。


志和:「CSジャーナル」も長年やってらっしゃるのですよね。始められたきっかけなど教えていただけますでしょうか。

清水:2012年に開始をしましたが、私がCS担当になった時に「ホテル本部の運営企画部としての私たちの役割は何だろう」と考えました。そして、3つの役割を挙げました。1つ目は「仕組みを作る」、2つ目は「データから改善を目指すためのスタッフ向け教育プログラムを作る」、そして3つ目が「情報を収集して、それをグループ内ホテルに拡散、共有する」でした。そして、その3つ目の収集と共有を、CSジャーナルというツールで取り組めるのではないかと思い、開始しました。


志和:「収集」と「共有」というワードは、TrustYouのサービスそのもののようにも思えますが、大切ですね。また、なかなかこのような取り組みは一人ではできないので、社内での協力関係は必須だったのではないでしょうか。


清水:ホテルのスタッフは、同じグループ内ホテルで行われていることも意外と知らないものです。ですので、他のホテルの成功事例を共有するのが私たちの役目なのではないか、と今も思っています。各ホテルのCS担当者にヒアリングすることは頻繁に行なっています。また新しい事を始める際は、その企画やアイデアが果たして現場で役に立つか、また現実的なのかどうかを総支配人に意見を聞いたりもします。



--データから改善を目指すためのスタッフ向け研修プログラム


志和:研修プログラムも実施されていると伺いましたが、具体的にどのような内容の研修をやってらっしゃるのですか。


清水:CSアンケートをやり始めてからCS向上に活かせるデータが集まっていることがわかりました。これらのデータを研修で活かすために、以前はワークショップ形式の研修をおこなっていました。各グループにデータやゲストコメントから自分達のホテルの強みや弱みを洗い出してもらい、それに対して、何ができるかを皆で話し合ってもらい、最後に発表してもらいます。

 

 できていない事やお客様からの不平やクレームのみに集中し、改善に取り組むことも重要ですが、それのみに取り組んでいるとモチベーションも上がりません。改善はされますが、元々マイナスだったものがゼロに戻るだけです。研修ではすでにお客様から好評価をいただいている点を活かしたり、他のホテルに横展開したりすることによって、もっとお客様から評価していただける可能性を探ることに注力しました。またコロナ禍は集合研修の開催が難しかったため、WEB研修会を行いました。データ分析から分かったコロナ禍におけるお客様の意識の変化などをホテルCS担当者に伝えました。


志和:このような研修を行うことでお互いのネットワークも広がり、気づきのポイントが多い研修を行うと問題解決は早くなりますね。現場ではTrustYouでスコアを確認しながら、優先順位や改善方法などを自ら考え、現場ですぐに!と改善に取り組んでらっしゃるのでしょうか。


清水:TrustYouをうまく使っているホテルでは、毎日GM以下、各部長がTrustYouのアラートメールでゲストコメントを確認し、朝一番に「改善に取り組もう」と各部門に指示をしています。また各ホテルではCS会議があり、その時にTrustYou のスコアとゲストコメントを確認し、改善策を話し合っているようです。そのようにCSデータやコメントを見て改善を行うというサイクルは回せるようになりましたが、今後は対応のスピードを上げるのが課題です。「今日、お客様がこう言っていた」というのはリアルで説得力がありますが、「先月お客様がこう言っていた」というレポートでは、感じ方が変わりますよね。


志和:人材不足という課題を宿泊施設様が抱える中で、意思決定がスピーディーにできるような環境(仕組み)を作り、迅速に改善できる体制を作り、それを効率化で補うといったイメージでしょうか。従業員を増やしていくという方向性もございますか。


清水: 2022年夏、GO TOトラベルで急に稼働が戻り、ホテルにも活気が戻ったのですが、慣れない手続きでお客様をお待たせすることになり、最初は現場も混乱しました。その後も低稼働な状況が続きましたが、昨年10月から全国旅行支援がはじまりました。ようやく稼働も戻りましたが、次の問題は「人手不足」でした。もちろん、試行錯誤をしながら効率化のためのテクノロジーの導入も検討していますが、今も各ホテルとも人手不足(求人募集しても集まらない)が一番の問題です。



--若いスタッフに「おもてなし」をもっと深く学んでいただきたい


志和:ホテルオークラ様もそうですが、御社の強み、長所という事で「おもてなし」がありますが、やはり御社の人材育成がそれを生み出しているのですか。そこに御社ならではといった特徴などはございますか。


清水:ホテルのサービスは比較的真似がしやすく、そこの差別化は難しいです。でも、試行錯誤しながら一通りやってみて、自分達がこれから何を売りにするかと考えると、やはり「おもてなし」ということになるのです。結局はそこに行き着くのかな、と思っています。

 以前におもてなしを磨くための研修も開発・開催しました。人の「気が利く」というのは感性の世界になりますが、私はある程度、教育を通して磨いていけると思っています。例えば「気が利く」の最高レベルが10だとすると7までは教育で足並みを揃えられるではないかと考え、研修を作りました。弊社では、2022年6月に大倉 喜久彦が社長に就任し、「おもてなしの心を体現し世界に届ける」をグループの使命としています。もう一度おもてなしをどう具現化して教育プログラムにどう落とし込んでいくかは今、考え中です。


志和:ある意味で曖昧と言いますか、「おもてなし」の定義が難しい中、色々と模索と工夫をされながら、研修も考えながら平準化に取り組まれている点が素晴らしいですね。


清水:例えば、志和さんがお仕事でホテルに宿泊される場合と、プライベートでご家族と一緒に宿泊される場合で、ホテルに求める内容も変わりますよね。ホテルのスタッフとしては、それを瞬時に感じて動かなくてはならない。そこをどう教育していくのか。一つは事例を毎月アンケートから抜き出して、「こういうことをすれば、お客さまが喜んでくださる」という内容を社内で共有していくことですが、それ以上のことをもう少しやりたく、そこは現在検討中です。


 最近、若いスタッフがホテルを辞めて、他の業界に転職してしまうケースが多くなっています。以前は、転職する場合は、他社の新規開業ホテルであったり、同じ業界でより良いポジションに就いたりしていましたが、最近では異なる業界、業種に転職してしまうケースが多いです。その理由は、待遇面の問題もあると思いますが、お客様との会話やおもてなしが好きで、この業界に入ってきたのに、「ずっと忙しく、そのやりたいことができなかった」というのも退職理由の1つのようです。


 「おもてなし」について深く学んでいだだくことで、若い人でも「それができるんだ」ということをぜひ知っていただき、それによって離職率が下がることを目指しています。


志和:私はTrustYouの管理画面やレポートを経営者の方のみでなく、現場のスタッフを含めた全ての社員にレポート機能などで数字を共有し、現場の判断ですぐに対応し、改善されたことによる成功体験を多く得ていただきたいと思っています。そして周りから感謝され、存在意義を感じそれが自信となっていく。そして、やる気と笑顔のある現場にしていく。それらの方々が接客をすればCSも上がる。宿泊されるお客様にも満足していただき、リピーターになっていただき、売上が上げる、そしてそれが昇給やボーナスとして従業員に還元される。従業員ももちろんですが、そのご家族もハッピー(幸せ)になり、皆が幸せになるようなサイクル、「ハッピーサイクル」をTrustYouが提供するサービスを通じて作って行きたいと思っています。


清水:ホテル業界の枠のみだけなく、より大きな目標があるのは良いですね。


 私もご紹介したいすごく好きな話がありまして、LCC(格安航空会社)のピーチ・アビエーションの井上前社長のお話なのですが、全日空から転籍された井上社長が、「ピーチは何のために存在する会社なのですか」という記者の質問に対して、「それは戦争をなくすためですよ」と即答されました。ピーチを使い、多くの若い人たちが海外に出れば、そこで知り合う人々と友達になれる。そうすれば、戦争がなくなっていく、という話が私は大好きなのです。それと似ている視点だと思いました。


志和: 素晴らしいお話ですね。私も自信を持ってハッピーサイクルを広めていきます。最後に、読者であるTrustYouユーザーの皆様を含め、ホテル業界の方に簡単に応援メッセージをいただけましたら幸いです。


清水:長かったコロナもようやく終わりをむかえ、外国人ゲストも戻り始め、いよいよ本格稼働ですね。現在ホテル業界では人手不足が深刻な問題だとは思いますが、また若い世代にホテルで働きたい!と思ってもらえるように、サービスの質向上、スタッフの労働環境向上を実現していきたいですね。


志和:本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。


写真キャプション:「The Okura Tokyoのロビー」、「ホテル日航アリビラ/ヨミタンリゾート沖縄のプールサイド」、「ホテルJALシティ富山の外観」

清水 絵里(しみず えり)氏 プロフィール

2007年に株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメントの前身である株式会社JALホテルズに入社。グループ内ホテルにおける、CS(顧客満足度)活動やカイゼン活動などを経験し、2016年からはブランドに関する業務も兼務。グループ初となるライフスタイルホテルブランド「Nikko Style」の立ち上げも担当。趣味はランニング、旅行、漫才を見ること。


株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメントHP: https://www.okura-nikko.com/ja/

 

編集後記: いつも弊社「TrustYouインタビュー」をご覧いただきありがとうございます。清水様のインタビューを行ったのはマスク着用の判断が個人の判断に委ねられてから数週間過ぎた頃だったので、マスクを外してインタビューを行いました。インタビューを進めていくうちにお互いの表情が確認できたこともあってか和やかな雰囲気で進みました。お話を伺っていて「仕組化された組織は強い」と改めて思いました。その背景には、オークラ ニッコー ホテルズマネジメント様の強みである「おもてなし」をより定量化しようとTrustYouのサービスを含め組織全体で品質の目標を設定し、達成するための仕組化を構築していらっしゃること。また、お客様の求めるサービスの芯をしっかりと捉え、満足度の高いサービスを提供できる人材を育成する仕組みが強固に組織を下支えしていて、またその厚みが分厚い印象を受けました。この仕組化は一朝一夕でできるものではなく、一人一人の理解、多くの時間をかけて作り上げられたもの。外部・内部環境に多少の変化があったとしても基盤は揺るがず経営・運営していける礎となるものであると感じました。(TrustYou代表取締役 志和孝洋)

 




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