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第12回 過去と未来をつなぎ、さらに名古屋と世界を“つなぐ”ホテルを目指す -- エスパシオエンタープライズ株式会社 執行役員 名古屋観光ホテル総支配人 中神 章裕 氏



1936年に開業、名古屋で最も長い歴史と伝統を誇る名古屋観光ホテルは、「中部の迎賓館」として国内外の賓客やVIPをお迎えしてきました。現在は、“つなぐ”ホテルとして「旅を発信する」~The destination for journey~をコンセプトに掲げ、名古屋を代表するホテルとして時代とともに進化を続けています。今回のTrustYouインタビューは、同ホテルの総支配人で、運営会社エスパシオエンタープライズ株式会社執行役員の中神 章裕 氏にお話をうかがいました。


志和:まずは中神様のプロフィールについて、教えていただけますでしょうか。


中神総支配人(以下、敬称略):私は1985年に大学を卒業し、近鉄グループの名古屋都ホテルに入社し、ホテリエとしてのキャリアをスタートしました。ベルボーイ、フロントクラークとして働いた後、宿泊セールスに携わりマネージャーになりました。その後、2000年に名古屋都ホテルが閉館となり、名古屋観光ホテルに入社することとなりました。トータルすると、まもなくホテルでのキャリアは38年になります。


志和:ご自身のキャリアの中で、記憶に残るエピソードなどございましたら、教えていただけますでしょうか。


中神: まず一番印象に残っていることは、1994年のプロ野球読売ジャイアンツ対中日ドラゴンズの10.8決戦(首位攻防戦)でしょうか。当時、読売ジャイアンツが都ホテルに宿泊しており、優勝したらどこでビールかけを開催するのかを社内で協議をしている中で、屋上にビアガーデンがあったため、屋上でのビールかけを提案いたしました。なぜ、屋上のビアガーデンでの開催をお勧めしたかというと、過去に他球団の方が某ホテルの宴会場で開催したところ、ビールの臭いが2、3週間抜けないという話を覚えていたからです。結果、屋上のビアガーデンでの開催となりましたが、ホテル側の思いはもとより球団の皆様からも高評価をいただき、大成功となりました。


また、印象に残っているのは名古屋観光ホテルへの着任5年後に「愛・地球博(2005年日本国際博覧会)」が開催されたことです。海外からの賓客が増えることを予想し、受け入れ準備に奔走しました。これまで国内の賓客のおもてなしについては経験がありましたが、海外の賓客をもてなす経験はあまりありませんでした。そこで当時、外務省の儀典官を講師にお招きし、海外からの賓客のもてなし方について、一からスタッフにトレーニングをしていただいたことで、世界各国からの賓客を大過なくもてなすことができ、とても印象深い出来事になりました。


志和中神様にとってホスピタリティ業界のどのようなところが魅力的だと感じられていますか。


中神:提供するサービスに対して、お客様から反応をいただくことでしょうか。現在も名古屋観光ホテルでは、レストランを増やしたり、宴会場を新しいスタイルに作り変えたり、客室の方も色々な形に作りかえていますが、そのようにハード面に変更を加えた際はお客様の反応が分かりやすいです。「今までの観光ホテルに比べ感じが変わったよね」、「こんなに良くなるとは思っていなかった。また使わせていただきますよ」といった良い意味でも悪い意味でもダイレクトに反応が伝わってきます。また、従業員のトレーニングのようなソフト面への投資でも、実施した後にお客様の声が伝わってきます。こういった変化に対してお客様から反応をいただくことはホテリエとしての醍醐味だと思います。


また、季節ごとに変えているレストランのメニューやプランなどはお客様に提供する前に「今年はこういう食材を使ってやってみよう」という議論を従業員同士でしています。職人肌の調理担当とサービスのプロであるサービススタッフが共に議論をするのですが、サービス担当からすると「こんなに手の凝った料理はサーブしにくいよね」とか、調理担当としては「この料理は出したいよね」といった異なる立場の意見が出ます。そのような異なる議論をとまとめていく(マージさせていく)、このプロセスがとても面白いと思っています。



--ゲストコメントを見える化し、社内で共有


志和:現在、中神様が特に力を入れて取り組んでいる事について教えていただけますでしょうか。

中神:総支配人としてチームの船頭になることが私の役目だと思っています。もちろん、自分のキャリアで経験の少ない専門分野もありますので、そこはプロである各部門のディレクターに責任を任せています。私の方では、社内で回ってくる情報を確認しながら、私が対応すべきことがあれば対応しています。


例えば、レピュテーション管理(クチコミ管理)についてですが、以前はTrustYou経由でゲストコメントが入っても、一部の管理職のみに共有されていた時期がありました。私が総支配人に着任した後、今ではなるべく多くの各部門リーダーにゲストコメントを共有できるように変更しています。ゲストコメントを週ごとに担当者がピックアップしてレポート化し、Goodコメントはそれを社内で広め、Badコメントについては、原因を探して改善するようにしています。(以前は同様の悪い事例が続くという状況が以前はあったのですが、そこも今の体制になってから、改善されました。)


ゲストコメントは部署ごとに取りまとめて、レポート化しています。改善が必要な点は、オペレーション側がすぐに対応できることであればすぐに実行する、設備投資が必要なことであれば、総支配人室で預かる、という対応です。今まではEメールで社内共有されていたものから、総支配人室で一旦レポートに整理して、社内で見える化できたことはとても良かったと思います。


また、レピュテーション管理の機能をマーケティング部から総支配人室に移したことが挙げられます。マーケティング部管轄だった時はどうしても改善に対するアクションが遅れる傾向がありました。逆に総支配人室はオぺレーションを統括する部署であり、私とレピュテーション管理担当者も元々現場出身者で、現場の業務や自施設の強みや弱みを理解しているという強みがあります。レピュテーション管理を総支配人室が担当することで、ゲストコメントへの対応や改善に向けたアクションのスピードが速くなり、現在は「名古屋市内で返信率トップを目指そう」とクチコミへの返信にも取り組んでいます。



--“褒める文化”を浸透させる


また社内で、「褒める文化も浸透させたい」という話になり、「今日はこの人にこのような事でお世話になった」といったサンキューメールを社内で共有するシステムを導入し、始めています。それを累積していくことで、半年に一回、各部門で頑張った人を推薦して表彰する、社内表彰制度を新たに導入しました。ホテルの歴史が古いため、人を褒めるというコミュニケーションの文化がなく、足りない部分でもありましたが、少しずつその効果も見られはじめています。


志和:従業員満足度の最大化を進めてらっしゃるということですね。従業員の方が自分の存在価値を確認するのは重要ですね。


中神:もちろん、従業員の給料に反映させないとならないのですが、そのためには利益を上げないとなりません。「皆で利益を出して賞与を分かち合おう」と激励しているところです。私自身、「誰かが見ていてくれている、評価してくれている」と社員が感じられることは、とても重要だと思っています。私が現場で働いていた時もそうでしたが、褒められた方も、褒めてくれた方に何か恩返しがしたいという気持ちになるでしょう。


それとは別に、従業員に社外で開催されるコンテストに出場することも奨励しています。調理、ソムリエやサービスのスキルアップが目的ですが、従業員には「ありとあらゆるコンテストに行ってきなさい」と伝えています。コンテストや大会があれば、従業員はそこに向かって自分のスキルを上げようと努力を重ねてくれます。そして、表彰や新たな資格を取ったら、ボーナスを与える制度を設けていますが、その件数は徐々に増えつつあります。


まずは従業員の皆に名古屋観光ホテルを好きになってもらって、「ここに勤めてよかったな」と思えるような従業員を増やさなくてはならないと思っています。それをどう発信していくかが私の務めだと思っています



--経営理念、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは?

志和:従業員の皆さんが指示を待つのではなく、より能動的に働くための行動指針など御社はお持ちなのでしょうか。


中神:弊社の従業員の行動は、経営理念であるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)に基づいています。MVVの取り組みを始めたのは、2021年に運営会社エスパシオエンタープライズ株式会社を設立したのがきっかけで、これは名古屋観光ホテルとホテルナゴヤキャッスル(現在改装中)という2軒の歴史のあるホテルの運営会社が一緒なるということでもありました。


若手メンバーを各部署から募り、7名のチームを作りました。そこで、面白いアイデアが上がってきたのです。それは、社名のエスパシオ(ESPACIO)から頭文字を取った行動指針で、Engagement(絆・チームワーク)、Sustainability(持続可能な社会)、Pride(誇り・伝統)、Act(成長・行動)、Courtesy(礼儀)、Innovation(創造的変革)、Omotenashi(おもてなし)でした。これを考えた7名のメンバーは、若手の第一線でオペレーションに携わっている従業員で、「今後、ホテルをどうして行きたいか、ホテルの強みと弱みは何か」といった点を議論しながらできた従業員行動指針です。現在は、毎朝のブリーフィングで、ことあるごとに、MVVについて語りながら、「今日はこの指針について力を入れて頑張ろう」と各部門の従業員同士で励まし合っています。



2000年以前の名古屋観光ホテルですと、お客様をエントランスでお迎えする際、「いらっしゃいませ」 「ありがとうございました」という挨拶をしていましたが、現在はお客様と目線を合わせるとう点を意識し、「おはようございます」、「こんにちは」、「こんばんは」 という挨拶でお客様をお迎えしています。時代に合わせて、「誰でも気軽に使える施設」と、皆さまから思っていただけるようにホテルを育て上げることを意識しています。


志和:ホスピタリティやソフト面のクオリティ(品質)の側面で工夫されていることはありますか。


中神:ホスピタリティ”というと、かしこまらなくていけないと思うので、その言葉を使わずに「フレンドリー」という言葉でもよいと思います。自分が楽しめないと、お客様も楽しませられないので、まずは働いている従業員が楽しめる文化を浸透させることだと思います。ドラマではないですが、「この人に会いたいから、このホテルに来る」といった具合に各従業員に50人のファンが付けば、稼働率の底上げにつながるのではないかと考えています。一人ひとりがブランド力を持って、集合体となり、それを束ねているのがエスパシオエンタープライズであるという組織づくりを目指しています。


今年度のアクションプラン、運営のテーマを「つなぐ」というワードしました。1936年に開業した名古屋観光ホテルもまもなく90年を迎えます。これまでの歴史から次の未来につないでいく、ホテルだけに集客するだけでなく、名古屋エリアに、愛知県にどのように人を集めるのか、どのようにお迎えするのかが非常に重要だと思っています。


志和:「つなぐ」というキーワードは素晴らしいですね。2027年にリニア中央新幹線(東京〜名古屋間)の開通が予定されていますが、その辺りの期待感はいかがでしょうか。


中神:まずは、東京−名古屋間が初めに開通し、東京から40分で名古屋に到着しますので、逆にビジネスのお客様のホテル宿泊需要が減ってしまうのではないか、という意見もあります。ただし、大量輸送の恩恵は受けられると思っています。移動距離が短くなることで、東京より北の県にお住まいの方が、名古屋にアクセスしやすくなりますし、その辺の繋ぎは強化されると思っています。また、インバウンドのお客様はリニア新幹線に乗ってみたいと思われるかもしれません。


志和:TrustYouに今後期待することがあれば、教えてください。


中神:使え切れていない部分(機能)が多いですが、今後どのようにしたらその使い道を発展させることができるのか、他のソリューションにつなげていくことができれば良いなと思っています。


今まではレピュテーションを上げることで、「お客様が泊まってみたいと思うホテル」を目指し、集客を増やしていくという取り組みで終わっていましたが、そこから次のステージに上げるのは、逆にご提案をいただきながら、そのご提案を活かしていこうと思っています。


志和:最後に、TrustYouユーザーの皆様や、旅行業界で働く皆様に応援メッセージがあれば、お聞かせいただけますでしょうか。


中神:共に地域の情報をどんどん発信していっていただきたいと思います。このエリアにはこんなものがあるよ、こんな体験ができる、というものをもっと発信していく。それは、普段の生活の中で、「これが美味しかった。これを見たらとても良かった」という日常の情報でも良いと思います。オリンピックとか何か大きなイベントが日本で開催される際は情報発信が増えるような気がしますが、日常的に地域情報の発信を増やしていくと良いと思います。


志和:本日のお話をうかがって、名古屋だけでなく、中部地方や全国の皆さんと情報交換をしていく、世界につながっていく活動をTrustYouとしてもサポートさせていただく機会をつくっていきたいと思いました。 本日は、貴重なお話をありがとうございました。


写真キャプション:「名古屋観光ホテル外観」、「ロイヤルスイート」、「メインロビー」

中神 章裕(なかがみ あきひろ) 氏 プロフィール

1985年、名古屋都ホテル(近鉄グループ)に入社し、ベルボーイ、フロントクラーク、宿泊セールスに携わる。2000年、名古屋観光ホテルに入社。現在は同ホテルの総支配人として、各部門を統括している。


名古屋観光ホテルHP: https://www.nagoyakankohotel.co.jp/


 

編集後記:


取材をさせていただくため、当日は名古屋観光ホテル様に伺いました。ホテルに入る際 、ベルボーイの方や館内のスタッフの方たちに笑顔でお声がけをいただきましたが、皆さんが活き活きと働いていらっしゃる、という印象を受けました。


今回、中神様のお話を伺い、皆さんの活力の背景にあるのは「つなぐ」という言葉に集約されているような気がしました。従業員満足度や顧客満足度に繋げるためにMVVを従業員の皆さんに考えてもらうことや、弊社の製品をご利用いただき品質の情報を素早く多くの方たちに共有し、直ぐにアクションし、品質を対価にしていく取り組みであったり、また最終的に給与などで従業員に還元していったりなど、多くの従業員が同じ方向を目指せるように組織を“つなぐ”仕組化作りを常に意識的にされていらっしゃるように感じました。


従業員の満足度が向上することにより、顧客満足度も上がっていき、対価(収益)も上がっていくサイクルを 弊社は「ハッピーサイクル」と呼んでいますが、名古屋観光ホテル様はまさにこのハッピーサイクルを率先して作り出している代表的なホテルの一つだと感じると同時に、このようなサイクルを作り出すため、弊社の製品が貢献できていることも嬉しく思いました。(TrustYou代表取締役 志和孝洋)

 





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