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  • 高津 暁

第3回 従業員とお客様の両方から愛される、風通しの良いホテルに -- 株式会社ロワジール・ホテルズ沖縄 ロワジールホテル & スパタワー 那覇 総支配人 武田 寛枝 氏

更新日:5月19日



沖縄の那覇市で地元の方々に愛され続けているフルサービス・リゾートホテル、「ロワジールホテル & スパタワー 那覇」。2020年12月に総支配人に就任された武田 寛枝さんにご自身のご経歴や、総支配人に就任されてからの取り組みについてお話しを伺いました。(聞き手:TrustYou代表取締役 設楽 奈央)


設楽:まずは武田さんのご経歴について、お聞かせいただけますでしょうか?


武田氏(以下、敬称略):専門学校卒業後、20歳の時に株式会社エアー沖縄(現ANA沖縄空港株式会社)に入社し、那覇空港でグランドホステスとして7年間勤務しました。まだ当時は産休や育休をを取得しにくい時代でしたので、出産直前の退職となりました。


 その後はしばらく専業主婦となり、夫の転勤にともない鹿児島に転居、第二子の出産後の30歳の時に株式会社リクルート(現株式会社リクルートホールディングス)のじゃらんで業務委託社員として仕事に復帰しました。鹿児島で3年間過ごした後、夫の転勤をきっかけに上京、じゃらん.netの営業担当となり31歳で契約社員、その後35歳で正社員になりました。じゃらん.netでは、営業リーダーとして、首都圏、箱根、熱海や沖縄エリアの営業を担当、その後、ホットペッパーを経て、リクルートライフスタイル沖縄に異動し代表取締役社長を4年間務めました。その後、ネットビジネス本部にてキャッシュレス事業に関わります。


 47歳で18年間在籍したリクルートを退職することになりますが、主な理由としては、母がいる沖縄に帰りたいという思いと、そのタイミングでロワジールホテル & スパタワー 那覇(以下、ロワジールホテル 那覇)を運営するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社(以下、ソラーレ)からお誘いがあったからです。また、リクルート時代には、BtoBの仕事に従事していましたが、もう一度BtoCの仕事をやってみたい、ホテルの仕事にチャレンジしたいという気持ちが湧いてきました。


設楽:沖縄に戻りたいという思いと、BtoCであるホテルビジネスでお客様と直接関わりたいというのが、ご自身のご希望だったのですね。


武田:はい。沖縄にホテルは沢山ありますが、ソラーレ社長の井上の考え方に感銘受け、一緒に働きたい、彼についていきたいなと思いました。


設楽:井上社長のどのような考え方に感銘を受けたのですか?具体的に教えていただけますでしょうか。


武田:井上は、投資ファンド出身ということもあり、斬新な考え方をします。例えば、朝食の片付けの効率化について話し合った際のエピソードですが、井上から出てきたアイデアは、「空いている宴会場に使用済みの食器を仮置きし、後でまとめて片付ければ良いのではないか」というものでした。そのように、井上からは従来のホテルマンとは少し異なる発想や考えがあり、私も学ぶ点が多いと思いました。また、井上の人情味溢れる性格にも、魅力に感じました。沖縄に戻りたい、直接お客様に接したいという思いと、井上の下で働きたいと思ったのが、転職を決意した理由です。



風通しの良い、社員の皆さんが自由に意見を交わせる組織に


設楽:武田さんのキャリアで、初めて宿泊業界に入り、さらにコロナ禍の難しい状況下で、初めて総支配人を務められることになりましたね。


武田:コロナ禍のため就任後の1年間は、やはり辛いものとなりました。2020年3月までは宿泊も宴会も動いていましたが、2021年に入ると、宴会やウェディングも動かなくなり、収益も減少しました。


 一つ宿泊業界に入ってから、驚かされたことがあるのですが、それは社員同士の上下関係がとても厳しいという点でした。伝統もしくは業界特性なのかもしれないですが、「総支配人の意見は絶対である」といったところがあります。そこは総支配人として、自らが変えていかなくてはならないと思いました。ロワジールホテル 那覇は、昔からホテルを守ってくださっている社員が多数いらっしゃいます。そのようなベテラン社員を尊重しつつ、もう少し風通しの良い、社員の皆さんが自由に意見を交わせる組織に変えていきたいと思っています。


設楽:武田さんから見るロワジールホテル 那覇の伝統や魅力と、逆によりよくしていきたいポイントはありますか?


武田:ロワジールホテル 那覇の魅力で言うと、当館はブランド力が非常に高く、皆さんに愛されているホテルであるという点です。例えば、私の総支配人に就任後、新聞にコラム記事を書いた際ですが、県内の方からお手紙をいただいたり、SNSなどで激励のコメントが入ったりしました。入社後に、ロワジールホテル 那覇を大切に思っている方が沢山いらっしゃることを知り、伝統として魅力はより伸ばしていかなくてはと思うようになりました。


 より良くしたいと思う点では、女性の管理職をもっと育てたいです。ホテル業界では男性の管理職の方が多いですが、社内の情報伝達やコミュニケーションという面に関しては、女性管理職の方が優れているケースも多く見られます。社内の風通しを良くして、より活躍できる人材を育て、増やしたいと思っています。



管理職、スタッフ、それぞれの得意分野で能力や強みを活かすことが大切


設楽:武田さんは、元ホテリエというご経歴ではなく、男性の管理職の多いホテル業界で、女性の総支配人としてチャレンジも多いと思いますが、武田さんの強みをどのように生かしていこうと考えていらっしゃいますか?


武田:私が持っている強みと、社内の管理職やスタッフの方々の強みは異なりますので、それぞれの管理職の得意分野で能力を活かしていただきたいと思っています。もちろん、私のホテリエとしての経験はまだ浅いので、分からないことは、逆に私から管理職やスタッフの方に「お願いします、教えてください」という姿勢で接しています。


 私の強みについてですが、過去にさまざまな業界でさまざまな経験をしてきていますので、人脈活用は私の得意分野だと自負しています。現在、社員約30名を社外に出向させていますが、その出向先を探すために、私がリクルート時代に培ってきた人脈を活用しました。社員の出向先については、他社のホテルよりも早く確保できたと思います。そのように、社内の役割分担と社員それぞれの強みを活かすことは、組織力を高めるために非常に重要だと思っています。


設楽:お客様に対してもそうですが、現在のような状況ですと、まずは社内の体制作りが大切ですね。対お客様のサービス向上に力を入れるか、それとも、社員教育に力を入れるか。CS(顧客満足度)を高めるために、どちらを先に取り組んでらっしゃいますか?


武田:コロナ禍でホテルのサービスを削減している中で、CSの向上を目指すのはなかなか難しいところです。現在も、当館の売りである2階の大浴場は休業していますし、そのような中でCSを上げるというのは簡単ではありません。


 ただし、そのような状況下にあっても、まずは会社の方針や考え方を従業員の皆さんに理解していただき、会社を信頼していただいた上で、経営を進めていくことが最も重要だと思っています。ES向上をさせることで、必ずCS向上につながりますからね。


設楽:その他で武田さんが注力をされていることはありますでしょうか?


武田:今は、レストランに注力しています。当館のレストランですが、お客様からは美味しいというお声はいただいているのですが、私の素人目線で見て、お料理の調理方法や見た目などに改善すべき点があれば、シェフと積極的に意見を交わすようにしています。


設楽:確かに以前からロワジールの料理は美味しいと評判ですよね。


武田:はい。そのような良い伝統がありますので、評判を落とすわけにはいきません。これまで出していたお弁当もシェフと話し合った上で内容を変更しましたが、今では「武田さんが来てからお弁当が美味しくなったね」とお客様から言われるまでになりました。


設楽:そのような変化をお客様に感じていただけるのは大きいですね。何かに取り組むとお客様からの評価や反応がすぐに返ってくるのが、BtoCビジネスの良いところだと思いますが、まずはやってみようというその一歩を踏み出すためのハードルは高いですよね。


武田:社内の改善案や新たな企画の起案についてですが、例えば、私から「ここをこうしようよ」と起案すれば、当然社員も動いてくれると思います。ただし、フロントをはじめ各部門の現場のスタッフから、良い起案や意見があっても、風通しの良い環境を整えないと、私には伝わらずに終わってしまいます。いいアイデアは聞きたいですし、現場の声は大事なので、実際に「私に直接伝えてよ」と社員には声をかけています。


設楽:そこはやはり風通しの良さを作り出そうとされているところですね。


武田:はい。休憩所でのエピソードなのですが、まだ入社されたばかりの施設管理担当の男性スタッフと世間話をしていた際ですが、その方は入社したばかりで、私のことをまだご存知なかったので、彼から「あなたどこの部署の方なの?」と聞かれました。私の方から、「私は総支配人なんですよ」と答えたら、とても驚かれ、「前職のホテルでは、総支配人の方と一度も話をしたことはないです。総支配人が休憩所に来て社員と話をするのですね」とおっしゃっていました。逆に私は現場の声を聞きたいので、休憩所で世間話をするのですが、それが逆に普通ではないのかもしれないですね(笑)。


設楽:今後、ロワジールホテル 那覇の管理職とスタッフとの距離感が短くなり、さらにゲストの距離感もさらに近くなっていくと良いですね。今後も「ヒロエイズム」が広がっていくことを期待しております。


武田:実は私もTrustYouを頻繁に確認しているのですが、最近あったクチコミで「ベランダで誰かが煙草を吸っていた」というものがありました。当館は、10階と11階に喫煙可能な客室があり、室内では喫煙可としていますが、ベランダでは禁煙というルールにしています。ただし、「ベランダでは禁煙」とプレートや案内はどこにも設置していなかったので、お客様は分からなかったのだと思います。社員からの起案で「ここは改善しよう!」ということになり、現在、宿泊約款の改定とプレートの設置を含め対応を進めています。



難易度の低いことからでも、お客様の声に基づいて何か新しいことをやってみる


設楽:客室が多いと、どこで何が起こっているか、お客様の声を聞かないと分からず、また改善を施す際も、客室が多いと膨大なコストがかかりますね。


武田:そうですね。悩ましいですが、まずは難易度の低いことからで構わないので、「お客様の声に基づいて何か新しいことをやろう!」と社内で音頭を取っています。館内の細いこと全てに私が気づくことはできませんので、現場のスタッフがもっと言いたい事を言い、その意見を上長が受けとめ、私に起案してくれるようになると良いなと思っています。


 あと、新たに取り組んでいることですが、外販とまではいかないですが、緊急事態宣言以降にお客様が激減した際に、よりロワジールのことを知っていただくためにも、「ホテルの外に出て何かをやろう!」と私の方から音頭を取り、今年4月に那覇市内のデパート開催された「おいしいパンとコーヒー」という催事に出展しました。また、レストランが休業してしまっている、DFSギャラリアの3階のレストランフロアにて、8月31日まで「カフェ・ロワジール」というカフェを期間限定で展開しています。


設楽:それはブランド戦略という観点もあるのでしょうか?


武田:はい。ブランド戦略もありますが、どちらかと言うと、コロナ禍の中で、地元のパートナー様との結びつきを強化する意味で、ホテルの外に出て活動するようにしております。出店するための予算はあまりないので、DFS様が活用できるプレゼントとして宿泊券やスパの無料券などを提供させていただいたりしています。


設楽:社員の皆さんも新しいことにチャレンジすることが楽しいのではないでしょうか?武田さんは、自分が現場を正しく知っておこうという姿勢を感じます。そのためにも、TrustYouもしっかり見ていただいているようで、ありがとうございます。


武田:毎日、1日3回ほどは見ています。クチコミについてですが、ネガティブなクチコミを書かれて仕方ないケースと、そうではないケースがあると思います。私もじゃらんにいましたので、コメントが個人の主観に基づくものであったり、全くの勘違いであったり、投稿者が宿泊者ではないケースがあることも知っています。


設楽:ソラーレ様では、本社にグループ全体のクチコミを見るご担当者様がいらっしゃるのですよね。


武田:はい。クチコミから問題らしきことが特定されると「何でこのようなことが起きているの?」とCS担当から問い合わせが入るので、その前に事前に状況を調べて報告するようにしています。本社でクチコミを集約してCS向上に努める体制ができているので、クチコミ活用と運用のPDCAサイクルがまわり、とても助かっています。


設楽:それはお客様と真剣に向き合っているからですね。稀ではありますが、「クチコミは大事だと思いますけど、あまり気にしないです」と言われる施設様もあります。


武田:ソラーレはクチコミをとても気にします。ネガティブなクチコミが入ると、社長の井上から直接、問い合わせが届くこともあります。逆に良いクチコミが入るとみんなで賞賛し合う文化も醸成されています。例えばホテルのあるスタッフに対して良いクチコミが書かれていることが分かった場合、そのスタッフを社内で特定し、表彰のような形でインセンティブを渡すような取り組みも行っています。


設楽:それは素晴らしい取り組みですね。


武田:そのような取り組みは、社員のモチベーションアップにはつながるのではないかと思います。


設楽:最後に今後の展望や、業界の皆様にメッセージがありましたら、お伝えください。


武田:ソラーレでは、ホテル業界が2019年の状況に戻るには10年はかかるという想定を立てています。今後、3年から5年で元に戻るという意見もありますが、出張の形態も変わりますし、旅行の形も変わり、インバウンド旅行者がいつ戻るかを考えると、やはり10年はかかるのではないかと思います。


 コロナ禍となって良かった点は、今までの無駄や非効率な点を見直すことができたことだと思います。今後もそれを続けていき、お客様に満足していただき、利益が出る運営をしていきたいと思います。過去の歴史で、人類がウィルスに負けたことはないので、自分たちを磨いて自分たちを進化させていくと共に、業界が衰退しないようにお互いに頑張りましょう。


設楽:最後に熱いメッセージをいただき、ありがとうございました。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

那覇ベイサイドエリアのヒーリングリゾート、ロワジールホテル&スパタワー 那覇

武田 寛枝 氏 プロフィール: 1972年、沖縄県浦添市出身。東京都の専門学校卒業後、株式会社エアー沖縄(現ANA沖縄空港株式会社)でグランドホステスとして勤務し、27歳で退職。2003年から株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)でホテルや温泉宿の広告営業に携わる。2013年から2017年まではリクルートライフスタイル沖縄の代表取締役社長を務めた。2020年12月1日より現職。


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