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第6回 お客様との共感を大切にし、豊かな実体験とおもてなしを地域と共創する -- 株式会社ホテル京阪 代表取締役 山田 有希生 氏

更新日:5月19日


京阪ホールディングス株式会社のグループ企業として、大阪市、京都市内の京阪電車沿線をはじめ全国に15軒のホテルを展開する株式会社ホテル京阪。今回は、コロナ禍の中、2021年に代表取締役に就任された山田社長にお話をうかがいました。(聞き手: TrustYou代表取締役 設楽 奈央)


設楽: 本日はよろしくお願いいたします。まずは自己紹介および御社のご紹介をお願いできますでしょうか。


山田氏(以下、敬称略): 株式会社ホテル京阪は、1979年に「ホテル京阪 大阪(現:ホテル京阪 天満橋)」が1号店としてオープンし、その後1984年に「ホテル京阪 京都(現:ホテル京阪 京都 グランデ)」、1990年に「ホテル京阪 京橋(現:ホテル京阪 京橋 グランデ)」と大阪、京都を中心に出店してきました。2008年には、「ホテル京阪 ユニバーサル・タワー」、さらに国内の主要政令指定都市にも出店しています。歴史をさかのぼれば、京阪電車は大阪の天満橋と京都の五条を結ぶ路線からはじまりました。また天満橋には京阪ホールディングスの本社があり、さらにはホテル京阪第一号店開業の地でもあります。この思い入れのある天満橋にこの度2号店、ホテル京阪 天満橋駅前を開業することとなりました。


 京阪グループは電鉄系の会社ですので、グループ会社と協力しながら、お客様の相互送客をしていますが、ホテルの場合は、沿線にお住まいの方だけでなく、全国からビジネスや観光でいらっしゃるお客様にご利用いただいています。近年ではインバウンドのお客様も増えてきており、多店舗化をすすめておりました。


 話しは変わって、私自身のことですが、京阪電車沿線の大阪府枚方市出身で、学生時代には、京阪百貨店でアルバイトをするなど、京阪グループには元々馴染みがありました。そのような縁もあり、1990年に京阪電鉄(現:京阪ホールディングス)に入社、入社後は駅の係員や車掌など京阪電車の仕事につき、その後は人事部に配属になり、長く人事の仕事に携わりました。


 ホテルや観光という分野に携わるきっかけとなったのは、2014年に経営統括室事業推進担当(観光共創担当)部長となった時です。主には京都市と大津市を結ぶ「びわ湖疏水船」の観光事業化を、京都市、大津市や地元の観光協会や商工会議所の方と実行委員会を組織し、実行委員長として事業を立ち上げ、推進しました。


 その後の3年間は、京阪バス株式会社で初めてグループ会社の実業に携わることになりました。路線バスの他、京都の定期観光バスの運行も行っている会社で、コロナ禍ではお客様が3割減少し厳しい状況となりました。そして、2021年の夏より京阪ホールディングスの執行役員に就任すると共に、ホテル京阪の社長に就任いたしました。


設楽:ありがとうございます。観光、バスや鉄道など、旅行業という枠組みでは同じですが、ホテルの社長になられて、どのようなお気持ちだったのでしょうか。


山田:前任者である社長の工藤(現:会長)は、ホテルでの経験も長く、多店舗展開、効率化などの構造改革にも取り組んでおり、その後を引き継ぐのは身の引き締まる思いです。



ホテルの客室は、自分の時間を提供する「サードプレイス(第3の場所)」


設楽:最近のビジネスマン/ウーマンで、ワーケーションをはじめ、リモートワークが中心になっている方々は、良くも悪くも仕事とプライベートの差がなくなっています。ホテルにおいても、今後フルサービス、宿泊特化型などのカテゴリーの境目がなくなってくる可能性がありますが、その点はどのようにお考えですか。


山田:まず弊社のマーケットでのポジションですが、外資系のブランドホテルや、シティホテルとも違う、またビジネス特化ホテルとも少し違います。仙台、名古屋、京都もそうですが、観光とビジネスのお客様の両方をターゲットにしているホテルです。

 

 また、私個人の考えですが、ホテルは「サードプレイス(第3の場所)」だと思っています。自宅や会社でもなく、近場で少しリラックスしたい時に、自分の時間を作れる場所だと思っています。


設楽:仕事とプライベートの境目がなくなり、会社と家庭での役割が混在してしまうと、心の休息ができる場所がなくなってしまいますね。最近、家ではない場所で仕事がしたい、家から少し離れて一泊だけするサードプレイスで自分の時間を過ごしたい、という目的でのホテル利用は、今後増えていくのではないかと私も思います。



地域や外部パートナーと「共創」し、新たな価値を提供する


設楽:御社のホームページを見て面白いなと思ったのですが、ホテル内での宿泊体験を売りにするホテルが多い中で、御社は観光、電車、イベントなど、季節ごとのフェアなど色々なものをチーム体制で出されているので、グループ全体で体験型商品を提供できることも大きな特長のひとつですよね。


山田:先ほど少しお話をしましたが、私が以前担当をしていました京阪グループの観光開発事業の部署、「観光共創担当」ですが、以前の名称は「観光創造担当」でした。“共創”には新しい観光素材を創造するという意味だけでなく、今あるものを磨き上げて新しい価値観を享受するという意味も含まれていました。

 

 京阪グループだけでは「びわ湖疏水船」のような観光事業は作れません。行政や地元と力を合わせ、皆で創り上げる(共創する)ことが大切です。これはホテルにも当てはまると思いました。宿泊特化型だからこそ外部のパートナーと一緒に組むことで新たな価値を提供できるのではないかと考えています。


設楽:確かにその方がお客様の宿泊体験としてもプラスになりますね。



SDGsの取り組みで大切なのは「共感」


設楽:現在、SDGsが世界での取り組みとなっていますが、御社のSDGsの取り組みについて教えていただけますでしょうか。」


山田:京阪グループではSDGsの取り組み、「BIOSTYLE(ビオスタイル) PROJECT」を推進しています。スローガンは、「未来は楽しく変えていこう」です。やはり、SDGsは不便な面があり、コストもかかります。でも、スーパーマーケットのレジ袋はどうでしょう。今は定着しましたよね。SDGsはそれぞれ個人に裁量を委ねられていて、比較的自由に取り組めるものだと思っています。


 お客様には、弊社の取り組みについて、丁寧に伝えなくてはならないと思っています。我々は、事業活動を通して、地球(陸、海、山)そこに住んでいる生物に対して貢献しなくてはならない。「未来」をイメージしながら活動しないとならない。最近では「六方よし」という言葉を使っています。近江商人でいうところの「三方よし」、1)売り手よし 2)買い手よし 3)世間よしに加え、4)作り手よし 5)地球(世界)よし 6)未来よしでやっていこうと伝えています。


 最近のアメニティ製品は昔のものに比べると質がとても良いです。お客様には、POPサインなどで「ぜひお持ち帰りください」と伝えるように、単にアメニティを減らすのではなくて、環境に配慮したアメニティの使い方も伝えていかなくてはならないと思います。考え方を変えることで、ライフサイクルが長くなったホテルの歯ブラシを家庭でも使っていただけるようであれば、全体的に消費される歯ブラシの数が減る可能性があります。そういった事を含めて、SDGsは、お客様との「共感」が大切です。


設楽:本当にそう思います。個人的には、SDGsの発信源として、ホテルはとても良い場所だと思っています。ホテルはおもてなしやホスピタリティを受ける場所であり、アメニティもその一貫になっていると思いますが、海外では「SDGsに取り組んでいるホテルにはもっとお金を払っても良い」というお客様が増えているとの調査結果が出ています。一方、日本では逆に、「エコ清掃に貢献しているからもっと安くてもいい」というクチコミをよく目にします。このような観点でも、ホテルから新しい文化を創っていくことが重要かつ効果的なのではないかと思っています。


山田:そうですね。ホテルは元々特別感のある所ですからね。ホテルの省エネの取り組みは、デジタル化とセットでやる必要があると思います。そこは、お客様のご理解とご協力も必要ですね。お客様からの共感を得られるように、現場は大変だと思いますが丁寧に伝え続けなくてはならないです。


設楽:私が宿泊したとある宿で、シャンプーとリンスのボトルに「地域でつくった地球にもやさしいものを詰め替えて使っています」とゲストに理解を求めるメッセージが書かれていたのを思い出しました。まずは理解をしてもらう。まずはコミュニケーションからスタートするというのが良いのかもしれないですね。


山田:私は人事部にいた頃、「コミュニケーションは、受け手が決める」ということを新入社員や部下に伝えていました。私も若い頃に文章を作る際に、上司から教えられましたが「山田君、小学生、中学生でも分かるように伝えなさい。朝日小学生新聞を読んで、そのまとめ方を学びなさい」と教わりました。私も従業員に物事を伝える際に気をつけていますが、シンプルに伝えないと、それが最終的にお客様にも伝わらなくなってしまいます。POPサインもそうですが、理解を促すためにはシンプルにすることが必要だと思います。


 例えば、自動チェックイン機は、導入すると業務効率が上がります。お客様からもコロナ禍では非接触ということで喜ばれます。お互いにとってメリットがあります。ただし、ホテルでは、リアルなコミュニケーションや会話を求められているお客様もいらっしゃり、「銀行のATMではないので、少し声をかけてくださいよ」というお声をいただいたこともあります。


 そこでは「あうんの呼吸」といいますか、スタッフがお客様と目が合った際にはご要望を察知するなど、ITとリアルの融合(ハイブリッド)が必要だと思います。対人での会話、確認というのは、今後もきちんとやっていきたいです。


設楽:最近ですと、「非対面・非接触」が一つの言葉となっていますが、非対面は少し違うのではないかと思っています。ホテルのサービスが非対面である必要はないですよね。目が合った時に助けてくださったり、「お困りの際はお声がけくださいね」などお声がけしてくださったりするだけで、対面の良さが出て、それで非接触の良さも活かされると思うのです。


山田:チェックインの時も何気ない声がけ、「ご朝食はいかがですか」、「お出かけするご予定はございますか」など、スタッフからは話かけてほしいと思っています。まず声をかけることでお客様の接客の好みもキャッチすることができるはずです。


設楽:現在はリモートでできることも多くなり、リアルなコミュニケーションの取りにくい世の中になっていますよね。客室にさりげなく置かれているメッセージカードもそうですが、会話が減っていく中で、それがホテル様のメッセージになると思います。QRコードから表示されるホテルのアンケートもその一つになると思いますが、どのようにお客様へリーチし、施設コンセプトやブランドの印象を残せるかもポイントですね。


山田:やはり顧客接点(タッチポイント)は大切で、まさに「真実の瞬間」です。ホテルにとっての勝負は、旅マエ(予約検討)の段階で、自社ホームページやOTAサイトでの情報の打ち出し方で、決まってしまっているのかも知れません。ただし、実際には自社ホームページや予約ページのことについてお客様からコメントをいただくことは少ないです。


 お客様からコメントをいただくのは、チェックインの場面で、フロントの接遇について、スタッフから案内不足についてなど、会話の部分が多いです。その後の場面としては、お部屋に入室してからの清掃、ハウスキーピングに関するご指摘も多いですが、最後は朝食の場面ですね。よく最終日の朝食がよければ全体の評価が上がるという話もありますが、予約前、チェックイン、入室、朝食、夕食といったそれぞれの顧客接点のタイミングでお客様の満足を得られるようにしていくことが必要です。



私たち人間は、五感を有して、呼吸をする生き物である


設楽:そうですね。最後に印象に残りやすいところは、どうしてもお客様の満足度に影響してきます。また、「五感に響くかどうか」は重要だと言われていますね。五感に響くところで、お客様の満足度が変わる。その中で食事は味覚、視覚を含め五感が使われるので、非常に重要だと思います。その上でのコミュニケーションですよね。


山田:6月に社長に就任した際に、このようなメッセージをさせていただきました。


「コロナ禍で小さく、縮こまってばかりではいけません。私たち人間は、五感を有して、呼吸をする生き物です。コロナ禍においてオンラインで簡便な意思疎通や交流を獲得、享受しましたが、やはり人間はリアルに五感を刺激する豊かな実体験、おもてなし、交流を渇望していると実感します。こういったお客様や社員の欲望をエネルギーに変えてやっていかなければいけません。ニューノーマルの時代にふさわしいウィズコロナの時代に沿ったとありますが、完全に前と違う訳ではない。まずはお客様の受け入れ体制をきちんとやっていくことからだと思います。」

山田社長(左奥)と同席いただいた小川支配人(左前)。ホテル京阪 天満橋駅前でのインタビュー風景

設楽:素晴らしいですね。


 最後に伺いたいのですが、TrustYouのアラートメールで届くクチコミは、社長自らがご覧になっているのですか。


山田:はい、もちろん毎日見ています。特にクチコミで「スタッフの機転がきいているもの」を見ると嬉しいです。やはり、スタッフのその場の機転でお客様に対応し、改善ができているととても嬉しいです。それぞれのスタッフが考えて行動してくれているのが分かると嬉しいです。


設楽:スタッフの方がクチコミでお客様からお褒めの言葉をいただいたら、社内でスタッフの方を褒めるご担当者などはいらっしゃるのでしょうか。


山田:社内でスタッフ向け「エクセレントアワード」という賞を設けていますので、これらもモチベーションのひとつになっています。


設楽:クチコミが良いと社員は自分の会社を誇りに思うことができます。自分の会社、仕事を誇ることができるのは本当に幸せなことですよね。クチコミはESを上げるためにもとても有効ですので、その観点でもTrustYouをご活用いただけていて嬉しいです。


山田:本当にES抜きにCSはないですよね。働きがいとは、自分が成長して、企業や社会に貢献することなのですよね。新入社員が色々と吸収していって、自分が成長すると、貢献できるようになります。一人前になって、仕事を任せられるようになると、嬉しいですよね。


 一人ひとり自分自身の成長に責任を持ってほしい。野菜もそうですが、自分で成長していきます。人間も自分の成長によって、仕事も楽しくなると思います。コロナ禍ですので常に上を向いてほしいと心から思っています。


設楽:はい、本当におっしゃる通りだと思います。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

2022年4月3日に開業したホテル京阪 天満橋駅前の外観、ロビー、客室

ホテル京阪 公式ぺージ:https://www.hotelkeihan.co.jp/


山田 有希生 氏 プロフィール:

1990年に京阪電気鉄道株式会社(現 京阪ホールディングス株式会社)​​に入社。入社後は、京阪電車の駅係員や車掌を経験後、主に人事部にて社内の人事部門などに従事する。2014年、経営統括室事業推進担当部長兼経営戦略担当部長に着任、京都市と大津市を結ぶ「びわ湖疏水船」の観光事業化を、実行委員長として、自治体や地元商工会議所ともに企画、推進する。2018年京阪バス株式会社常務取締役に就任。2021年6月 京阪ホールディングス株式会社執行役員および株式会社ホテル京阪の代表取締役社長となる。




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