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第7回 共感と謙虚さを大切にし、未来にバトンを渡せるように-- 東京ステーションホテル 総支配人 藤崎 斉 氏


重要文化財である東京駅丸の内駅舎の中に位置する東京ステーションホテル。開業100年以上の歴史を持ち、「時代を超えて愛される、上質なひととき」をお客様に提供しています。今回のTY Top Interviewでは、2012年のリニューアルオープンに総支配人に就任し、未来にバトンを渡すべくお客様と従業員と共に歩み続けている藤崎 斉 総支配人にお話をうかがいました。(聞き手: TrustYou代表取締役 設楽 奈央)


設楽:早速ですが、コロナ禍以降で、御社で取り組まれてきたことなどを教えていただけますでしょうか。


藤崎氏(以下、敬称略):コロナ禍に入った2年間ホテルをクローズすることは一度もありませんでしたが、一時期は館内にお客様も少なく、スタッフが淋しい気持ちで仕事をしなくてはならなかったことが、やはり辛かったです。私は2020年4月から1年間、ホテルにリヴ・インしていましたが、出勤制限などもあり、限られたマンニングでオペレーションしている館内を回っては、スタッフに「おはよう」、「こんにちは」、「元気?」と挨拶をすることを続けていました。


 コロナ禍に入っていくつか分かってきたことに、過去の方程式のようなものは全く通用しない、そして先がどうなるか分からないという現実がありました。実際に私自身で様々なデータを集めて、分析をし、状況が落ち着き回復するポイント「X デー」を算出し、予測したことがありました。しかし、そのX デーが見事に外れてしまい、そのようなことが何も意味をなさないということに気づかされました。通常であれば、各種データ分析や事業環境から予測(フォーキャスト)を立てて、必要なアクションプランを立案するのが一般的なビジネスサイクルですが、そういったことに時間を割くことに対して、虚しさや無力感さえ感じました。


 そのような中で、「何をすべきか」、「本質とは何なのだろう」をいうことを考え抜いてきた2年間であったと思います。それは、お客様との関係であったり、ホテルビジネスや観光業そのものであったり、また多数のビジネスパートナー様、企業様との関係性であったりもします。日々悩む中で、支えたくれたものは何か。当然、株主であるJ R東日本からの資金援助と大きなバックアップもありましたが、本当に私たちを支えてくれたのは、やはりお客様で、お客様から届くメッセージやコメントにどれだけ救われたことかわかりません。

 

 客室稼働率も激減し、通常時の約3分の1になってしまった月もありました。しかし、このコロナ禍の中で、2018年、2019年に比べると増えたものがありました。それはお客様のゲストコメントの数です。当館はオフラインで、お客様からお手紙やメモをいただく場合が多いのですが、それが驚くことに通年の3倍に増えた時期がありました。日頃、弊ホテルのアンケートにお答えいただき、コメントを入れていただいた方には、原則、私のサインを入れて、郵送で返信をさせていただいていますが、それが追いつかなくなり、最大2ヶ月遅れになりました。最近やっと1ヶ月遅れという状態になっています。


 また、いただくコメントのそれぞれが長く、内容も重いのです。コメントの内容の全てを社内で共有することはできないものの、出来るだけスタッフに直接フィードバック(共有)し、従業員スペースの掲示版にもコメントを紹介しています。コメントにはお客様の想いや、来館をされた理由をお書きいただいている場合が多くありますが、コロナ禍の中、私もスタッフも、本当にお客様のコメントに支えられてきたということかと思います。


設楽そうですよね。お客様の想いがこもったコメントですからね。


藤崎:コロナ禍に入ってから半年くらい経った時ですが、地方にお住まいのリピーターのお客様からお手紙が届きました。その内容は次のようなものでした。「また今回もあきらめざるをえません。このご時世、予約をするのもキャンセルするのもクリックひとつで済んでしまいますが、私の想いはそんなに簡単なものでなく、その悔しい、残念な気持ちを直接お伝えしたくて、筆を取りました。 <中略> 東京ではマスクが不足していると、報道等で聞きました。何の役にも立たないと思いますが、少しばかりのマスクを同封させていただきます。皆さま頑張ってください」と、東京ステーションホテルへの想いが綴られており、マスク数枚が同封してありました。このお手紙を読んだ際は、膝から崩れ落ちるような気持ちでしたが、目の前だけではなく、遠く離れた所にいらっしゃるお客様が想いを寄せていただいて、支えてくださっているからこそ私達は存在していることをあらためて実感した瞬間でもありました。


 また、最近ご宿泊いただいたお客様からは、「ここで生きる力をもらいました。また明日から頑張って、また必ず戻ってきます。どうか、いつまでも存在し続け、輝き続けてくださいますように」というコメントをいただきました。これは私たちにとっては、ホテルの使命にも倣って、もはや遣り甲斐を感じるということを超えているようにも思えます。



価値を決めるのはお客様で、そこにいかに謙虚になれるか


設楽:東京ステーションホテルはその方たちの人生の一部になっていると言っても過言ではないですね。


藤崎:そうですね。そのために私たちは何ができるのか、いかに自分達が毎日真剣に、愚直にそして懸命に仕事をするか、それに尽きるのではないかと思います。


 東京ステーションホテルが再開業した2012年に、親会社であるJR東日本が、「これまでの100年からこの先の100年へ」と東京駅全体で掲げました。しかし、100年先には私たちはもう生きていません。この先どのように走って、どのようにバトンを次の世代に渡していくかだと思っています。私もグローバル企業に20年以上も在籍していたことから、短期的利潤追求の厳しさと喜びも知っています。ただし、短期的な戦略だけでなく、中長期にわたって事業継続をしていくための健全な成長シナリオも描いていきたいと思うのです。


 また、ホテルを評価し、その価値を決めるのは、あくまで市場、お客様ですので、ホテルのクラス感というものは、お客様とスタッフが一緒に創り上げていくものだとも思っています。よって、ホテルで働く者としては、お客様や関係者の方々に対していかに全力で応えることができるか、それが何より大切です。


 私たちのようなホテル業は、「瞬間生産、瞬間消費、瞬間評価」のビジネスだと社内でも話しています。例えばレストランでは、食事は作った直後にお客様に消費されます。そしてその場でお客様が写真を撮り、SNS等にアップし、そこで評価がされることが多くなっていることはご存じの通りです。非常にプレッシャーがかかりますが、スピード感が要求される遣り甲斐のあるビジネスだと思っています。


 ホテルで瞬間評価をいただく場合は、まだお客様がご滞在になっているケースも多くあります。例えば、お客様からのネガティブな口コミを夜間に確認した場合ですが、そこから対策やフォローアップが始まります。翌朝のブリーフィングで関係部署に情報共有し、チェックアウト時には、部門にかかわらずスタッフがケアし、フォローできるようにしますが、その繰り返しだと思っています。


 先程お話したように、価値を決めるのはあくまでお客様ですので、そこにいかに謙虚になれるかが重要です。もちろん、資源や資金は有限ですので、お客様のご要望全てにお答えすることはできませんが、傾向を把握し、社内のリソースをどこに重点配分するのかを考える。それを判断するのがマネジメントで、判断をするために活用するTrustYou 様のようなソリューションがなければ、ホテルビジネスを回すのは難しくなると思います。毎日お客様から届くコメントを見るのが楽しみでもありますし、緊張する一瞬でもあります。幸いなことにグッドコメントが多いことはありがたいことですが、よくここまで気づいてくださったな、と感心させられることも少なくありません。



「スタッフの努力は無料でない」、コロナ禍中にサービス料金の値上げを決断


設楽:ありがとうございます。中長期的に健全なホテル経営をされるために取り組んでいらっしゃること、もしくは意識されていることはありますか。


藤崎:スタッフには常に「見えない所で努力する人になってほしい」と思っていますし、「品質とは人が見ていないところで手を抜かないこと」とも言っています。そのような地道な努力をマネジメントは見逃してはなりません。そして、スタッフの努力は決して無料ではありませんし、安易にディスカウントさせたくもないと思っています。無論、その考え方は土台となる品質が確保されていなければ成立しませんが、そこに自信があれば、慎重に判断すべきだと思います。ここ数年、東京都内での多くは低価格競争にさらされており、短期的な収益を考えた場合、ボリュームを増やすために価格を下げる方が簡単という考え方もありますが、価格を一旦下げてしまうと、中長期的視野で考えた場合には、元に戻すには時間が掛かりますし利益率の観点からも、良く考えるべきだと私は思っています。


 しかし、私の仮説がうまく成立せず、マーケットから見放されるのであれば、戦略、戦術を変えていかなくてはなりません。ですが、今のところ、軌道修正しなくても済んでいるということは、お客様から「価格に見合う品質」だと認めていただけているのだと判断しています。


 東京ステーションホテルのアンケートで、総支配人である私にとって重要な質問事項があります。それは、「価格に見合っていましたか」、「あなたはこのホテルを友人、知人に紹介しますか 」の2つの質問で、幸いなことに数年前の設問開始以来高いスコアを維持しており、2021年度平均は約95%となっています。また、それを見て、レベニューマネジメン上のプライシング(料金設定)の判断材料にもしていますので、「お客様にきちんと価値を認めていただけているのであれば、価格を下げなくても大丈夫だ」という自信につながります。


 スタッフのサービスには、見えない努力が本当に山のようにあり、コロナ禍中の衛生管理対策にもコストと時間、労力がかかっていますので、弊ホテルではサービス料金を僅かですが値上げさせていただきました。周りからの反対意見も多少ありましたが、実際のところお客様からの評価(満足度)は下がっていません。逆にお褒めのコメントが大幅に増えました。価格を維持、上昇させる以上、私たちはその価格に見合う、もしくはそれ以上の努力をしなくてはなりません。しかし、スタッフは会社や上司の命令ではなく、自らお客様に向き合い、きちんと寄り添っていると思います。弊ホテルのコアバリューにもある「共感」「謙虚」ですが、上司から褒められるよりも、お客様から「感動しました。必ずまた来ます」と言っていただくことがスタッフにとっても最高の褒め言葉となり、モチベーションになるのではないでしょうか。


設楽:御社の「謙虚、共感」というコアバリューは、お客様のコメントからも非常によく伝わります。ラグジュアリーホテルのコメントに多く見られる華美な言葉ではなく、「上質」という言葉が散見されるので、御社のコアバリューを評価されている方が非常に多いことがわかりますね。


藤崎:それは私たちのミッションステートメントの一つに掲げているものでもありますが、デラックスやゴージャスというような言葉は使わず、「洗練された、居心地の良い空間を創り出す」ということを目標にしており、それがこの10年間で、お客様に伝わってきているのではないかと思います。


 また、再開業時に東京ステーションホテルに心血を注いでくださったプロジェクトチーム、デザインチームの方々が多数います。竣工時に東京駅丸の内駅舎保存・復原プロジェクト室や工場現場の方々から「私たちは竣工後には、この場を離れますが、使い続ける文化財としてはこれからです。バトンを渡します」とホテルを託されました。実際にオペレーションを任された私たちがこのかけがえのない建物を引き継ぎ、大切にメンテナンスし、物語を紡いでいく約束をしたのです。


設楽:皆さんの想いを繋ぐストーリーがあるのですね。


藤崎:それこそが、単に古いということだけではなく、歴史やストーリーにきちんと向き合い、理解し、そして自分の言葉で語れるようになると、そこにお客様との共感が生まれていくのだと思います。


 バトンを受けていますので、皆がこの施設を大切にし、日々メンテナンスを行っています。バックスペースもパブリックスペースと同様にトップコンディションにしてほしいと伝えています。このプロジェクトに関わった建設会社や設計会社の方がたまに来館されますが、「竣工から10年経ってもこの美しさがあり、こんなに大切に使っていただき、本当にありがたいです」と言われます。


設楽:従業員の皆さん全員がそう思っていらっしゃるからこそ、その気持ちがお客様にも伝播していくのですね。


藤崎:そうだと思います。それがお客様にも伝わるからこそ、お客様の客室をはじめとするホテルの使い方も実に丁寧なのです。「あまりにも居心地がよく、一歩も外に出ませんでした」とおっしゃるお客様もいらっしゃいますし、「このホテルに来ると自然と背筋が伸び、言葉遣いが丁寧になります」というゲストコメントをいただいたこともあります。また、スタッフのことを気遣ってくださるメッセージが実に多いこともこのホテルの特長です。ハウスキーピング宛のメッセージも多く、「このように美しく清潔に整えていただき、本当にありがとうございます」というコメントもよく目にします。ハウスキーピングのスタッフは大いに励まされますし、つくづくお客様と一緒にホテルを創り上げていっているのだと感じます。


 以前ですが、ある部門長が「このホテルをゲストも働くスタッフも最も幸せだと感じるホテルにしたい」と言いましたが、それこそが、私たちが目指す“真のラグジュアリー”、“心の豊かさ”だと思っています。


 もう一つお客様からいただいたアンケートのコメントをご紹介したいのですが、職業欄に「年金生活者」と書かれた方がいらっしゃいました。コメント本文に「このホテルに妻と泊まることが夢でした。本当にかけがえのない時間となり、また明日から二人で頑張って生きていけます。そしてまたお金を少しずつ貯めて必ず帰ってきます」と書かれてありました。そのコメントを見た際に、私達が背負っているものの重さを感じたことを今でも鮮明に覚えています。


設楽:皆さんの想いがしっかり届いている証ですね。やはり皆さんが作る雰囲気や空気から、幸せを感じるのでしょうね。


藤崎:お客様のコメントから単なる満足感というだけなく、何か心に沁みていくようなものを感じます。幸せに大小などはないと思いますが、小さな幸せでもよい。そういうホテルでありたいですし、あり続けたいと思うばかりです。


設楽:小さな幸せの積み重ねは、お客様が自ら作ることができるストーリーでもありますよね。


藤崎:結婚式や試食会、ホームカミングパーティーなど、館内の色々なイベントで私もお客様に直接ご挨拶させていただく機会がありますが、「東京ステーションホテルには、100年の歴史がありますが、皆様もこの物語の一部なのです。どうぞご一緒に物語を創っていってください」とお伝えしています。


設楽:皆さんのストーリーがホテルで交差しているのが素晴らしいですね。


藤崎: 一緒に作っていくという部分では、ITの世界でいうと「オープンソース」のようなものだと思います。オープンソースコードがどんどん上書きされて、OS(オペレーションシステム)がより洗練され、汎用性が増し、楽しくなっていくように。そして、ホテルに於いては、その品質向上の為にお客様と私達を繋ぐ部分をTrustYou 様のソリューションが、プラットフォームとして存在しているのではないでしょうか。


設楽:御社のコメントを見ていると、批評家のようなコメントが少なく、応援のメッセージのようなものが多いですね。お客様はホテルの鏡ですので、コメントとして施設様の温かい気持ちが映し出せられます。実際に御社のクチコミコメントは、読んでいてとても気持ちが良いです。


藤崎:弊ホテルにはTSH Wayというビジョン、ミッション、コアバリューがあります。これはスタッフにとっての北極星とも言えるのですが、判断に迷った際には、常にここに帰ってきます。「この先の100年も東京の中心で輝き続け、語り継がれるホテルであろう。先人達の積み重ねと、このヘリテージに感謝して。」あとはTSH Wayを基に、スタッフ自らが考えて行動します。


設楽:そうですね。お客様にとって、またここに戻って来たい、というアットホームで大切な場所なのでしょうね。

藤崎:実はこれはマネジメントが一方的に決めて押し付けたものではなく、スタッフが皆で一緒に考え、作ったものなのです。ビジョン、ミッションは開業準備室のメンバーで創り上げましたが、数年後に加えたコアバリューを決める際は、部署や役職にこだわらず「東京ステーションホテルらしい人」を集めてプロジェクトを進めて欲しいとだけ依頼しました。皆で考え原案を提出し、最終的にそれを明文化しました。本当は私も少しは関わりたかったのですが、総支配人が出てしまうとそれで決まってしまうので、最後まで私達にやらせてほしいと、ほとんど関わらせてもらえませんでした(笑)。しかし、想定していた通り「共感」や「謙虚さ」というキーワードが出てきましたので、ホッとすると同時に嬉しく思ったことを

覚えています。



指標として最重要視しているのはリピート率


設楽:それだけ皆さんの情熱を感じますし、これは、お客様が見られても、納得されますよね。


藤崎:私たちもさまざまなビジネスKPIを持っており、当然利益率などもその中の一つですが、最重要視するのはリピート率です。なぜならば、それが最終的にキャッシュを生むことを知っているからです。その考え方の背中を教えてくれたのが、アメリカで出会った、あのAmazonも震撼したというザッポス(Zappos.com)という会社で、そのCEOが目指していた「リピート率80%」でした。弊ホテルでは現在、宿泊をされるお客様の約50%、、宴会(MICE)では60%以上がリピーターですが、それを更にあげていきたいと思っています。


 お客様から「とても美味しかった、また利用します」、「素晴らしい滞在でした、また必ず帰ってきます」と言っていただくために、スタッフは、細かく行動内容やサービス手順に関していちいち指示を受けたり、承認を取ったりする必要は原則ありません。もちろんマニュアルやSOPはありますが、KPIの最上段は「リピート率をあげること」なのですから、それに合っているのであれば、それぞれが適時判断することを推奨しています。


設楽:収益を注視することはサスティナブルなビジネスとして当然のことではありますが、それはあくまでも結果であり、皆さんが目指す指標はわかりやすく、リピート率。これを社内で浸透させたのは素晴らしいリーダーシップですね。「また来てくださいね」という気持ちが収益に繋がる。これほど本質的な取り組みはないですし、心の中で何を目指すかが明確であることは、御社の強みですね。


藤崎:先にキャッシュ第一を考え、コストカットや極めて短期的な収益についてばかり考えるよりも、リピート率を上げる方が、利益率を上げることに貢献します。経営学の話になりますが、新規のお客様を時間を掛けて獲得するよりも、目の前にいるお客様にまた来ていただく場合、その集客コストは約1/5と言われています。いわゆるアクイジションコストとリテンションコストの関係です。利益率、コストのみを考える経営が、何年先までも続くとは思えません。やることは遠回りに見えますが、実は、それが理にかなっていると私は思っています。


 東京ステーションホテルが開業100周年を迎えた際に、全国紙の記事で取り上げていただいたエピソードをご紹介します。ある時、ゲストリレーションズのスタッフがエスコートしたホテル2回目の滞在となったご夫婦のお話ですが、1回目ご宿泊時は、ご主人様が大病を患っていて、ラウンジでこれから始まる闘病を誓い合ったそうです。そして、その後手術が成功し、やっと外出できるようになり、快気祝いとして2回目の宿泊だと知ったそのスタッフは、自身の判断でそのご夫婦をラウンジに招待しました。誕生日でもあったそのご主人様の手には一回目の宿泊時には口にすることが出来なかったビール。それはそのスタッフからのささやかなプレゼントでした。その後「このおもてなしは一生忘れません」というコメントをいただいたことは、私達のみならず、この記事を読まれた多くの方々に感動をお届けできたと思います。


 スタッフが使える予算の上限を設けているホテル様もあると思いますが、目の前のお客様に全力を尽くし、人としての常識で判断することが大切です。弊ホテルで働くスタッフは、ホテルの経験がなくても、カルチャーやコアバリューに合えば、必ずしもホテル経験者でなくても良いと思っています。最終的な結果は全て顧客満足度として現れているのですから、TrustYouのクチコミデータから「私たちのコアバリューは合っているかどうか」を確認することができるはずですし、それは私たちの大切な道標ともなるのです。


設楽:そのような心強いお言葉をいただけると、私たちも非常に救われます。弊社のツールは、皆様の取り組んだことへの答え合わせに使ってくださいと、いつも伝えさせていただいています。


藤崎:その通りだと思います。また、よくクチコミへの返信率を上げるべきと言われますが、全ての施設に当てはまるとは考えていません。そこはホテルのグレードや知名度などでも違ってくるはずと考えています。無論、ネガティブなコメントがあった場合には必要に応じて、こちらからご連絡をし、直ぐにフォローするようにしていますし、また当然のことながら直接のお手紙やアンケート用紙でいただいたご意見やメッセージには原則、返信可能なものは全てお届けしています。


設楽:やるべき事とやらなくて良い事を明確にすることはビジネスにおいて非常に大事ですよね。


藤崎:管理職は上位になればなるほど、判断することが重要な仕事になります。間違った判断をしないようになるべく事前に多くの情報は集めなくてはならず、以前は毎日、「皆さん、TrustYouは見ていますか」と私から確認を取っていましたが、現在では宿泊予約課を中心に皆が先に見て対策をした上で、ホテル内イントラネットで関係各部宛全てに発信され、毎朝私のofficeで行う部門長ブリーフィングでも共有されています。


設楽:素晴らしいです。これからも楽しみですね。


藤崎:組織は生きものですので、構成する人によっても変化していきますが、お客様とは変わらず繋がり続けていきます。未来の後輩達から、「あの時に一体何をやっていたのだ」と指摘を受けたくはありません。未来にバトンを渡すために、変化し続ける世の中で、後を継ぐ人達に選択肢を残せるような取組みを続けていきたいと思っています。


設楽:本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。


左より:パレスビュープレミアムデラックスツイン、ゲストラウンジ「アトリウム」、ホテルの外観(夜景)

東京ステーションホテル 公式ぺージ:https://www.tokyostationhotel.jp/


藤崎 斉 氏 プロフィール:

東京都出身。立教大学経済学部卒業。

1984年、東京ヒルトンインターナショナル(現ヒルトン東京)開業スタッフとして入社。2002年、ウェスティンホテル東京入社、宿泊部長を経て副総支配人就任。06年、JAL ホテルズ(株)本社営業本部副本部長として入社。10年、執行役員、営業本部長兼マーケティング部長。11年7月、日本ホテル株式会社、東京ステーションホテル開業準備室室長として入社。12年4月より現職。



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